未承認薬としての大麻の利用について

  第22回 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議が開催される。
  大麻がここでいう「医療上の必要性の高い未承認薬」といえるかどうか。
  この未承認というのが、海外では承認されているが日本ではまだ承認されていないという意味なのか、海外でも未承認だが、「医療上の必要性が高い」として国が制度を設けて例外的に使用を承認しているものを含むのかどうか。
  この検討会議の趣旨が、末期がんの疼痛や難病など治療法の限られる患者のための特別な制度を検討するというものだとすれば、当然、大麻も含まれると考えるべきだろう。
  というのはアメリカ23州をはじめ、ヨーロッパなど多くの国で、大麻は医薬品としては未承認なまま、特別な制度(コンパッショネート・ユース制度)のなかで、使用は合法化されているからである。
  ただ日本と欧米が根本的に異なるのは、日本では大麻が取締法により、医療使用まで例外なしに禁止されているという点である。
  1961年の「麻薬に関する単一条約」以後、いくつかの国際条約で大麻は厳しい規制下におかれることになったが、そのいずれの条約においても、医療研究は規制から除外されている。つまり医療研究はしてもいいということになっている。
  ところが日本の場合、1947年の大麻取締法で医療使用を禁止してしまっており、欧米とは事情が異なり、大麻に関しては欧米の制度をそのまま移入しにくい状況である。
  当然、この検討会議では大麻が話題にあがることすらないだろう。

 

  以上は天然の大麻、つまりマリファナに関してだが、それでは、医薬品に加工したものはどうか。
  イギリスにGW製薬という製薬会社があり、大麻の有効成分カンナビノイドを使った医薬品を製造販売している。
  同社のSativex は多発性硬化症の痙攣を抑制する薬として、多くの国で承認されている。
  また同社のCBD製剤である難治性小児てんかんの治療薬 Epidiolexが、アメリカにおいて、患者が治験に参加するという形で治療を受けている。
  ほかに、神経膠腫、2型糖尿病、潰瘍性大腸炎、統合失調症の臨床試験もすすめている。
  日本の大塚製薬のグループ会社にOtsuka Pharmaceutical Development & Commercialization, Inc.があり、GW製薬と、技術的・資金的提携関係(2010年)にある。
  しかしGW製薬の製品は、大麻草全体を利用するため、日本の大麻取締法では違法である。
  ただSativexはカナダなど多くの国で承認されており、日本の多発性硬化症の患者が痙攣の治療目的で厚労省大臣に「未承認薬の例外的使用許可」の申請を行えば、状況は微妙である。
  官僚としては明確な法的受け皿がないと動けない。しかし黙っていれば、政治家が法の改正に動くことはない。
  また、欧米ではGW製薬の医薬品より天然の大麻のほうが効果的で好まれるという傾向があり、それも含めた法の改正が求められる。
  大麻の成分であるカンナビノイドが末期がんの疼痛緩和などに有効であることは、国立がんセンターの報告にもあるとおりである。
  患者と支援者が声を出して、健康は憲法上の権利(人権)であることを政治家に理解してもらい、法と制度を変えるしかない。

 

  薬理効果と作用機序が確認されてから20年以上になり、WHOも継続的な研究を推奨しているにもかかわらず、なぜ大麻がモルヒネやほかの医薬品のように、臨床試験を通して医薬品として承認されないのか、については別のところで書きます。(文責・前田)

 


 

 

日本で承認されていない薬を安全に使う

「日本で承認されていない薬を安全に使う:抗がん剤など未承認薬の使用が必要になった時、公的制度としての「コンパッショネート使用」(CU)制度が存在する。世界各国のCU制度の現状と、日本のCU制度創設へむけての提言」

 


  (関連記事)

 

  ★ コンパッショネート・ユース制度については、日本でも必要性が認められ始めている。簡単に言うと「基本的に生命に関わる疾患や身体障害を引き起こすおそれのある疾患を有する患者の救済を目的として、代替療法がない等の限定的状況において未承認薬の使用を認める制度」で「未承認薬の人道的供給システム」とも呼ばれる。

 

   厚生労働省 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会
  13ページ目に「日本におけるコンパッショネート・ユース制度」について、簡単な記述がある。政府の文書のなかに「コンパッショネート・ユース」という言葉がようやく見られるようになってきた。
   「欧米においては、重篤な疾患で代替治療法がない場合などについて、やむを得ず未承認薬を使用するという、いわゆるコンパッショネート・ユース制度が存在し、米国では治験の枠組みのなかで、欧州では、治験とは別の制度として、それぞれ設けられているが、そのあり方につき、現在も様々な議論が行われていると言われている。(中略)やむを得ず未承認薬を使用せざるを得ない場合には、「治験を実施して承認する」との原則を阻害しない範囲で、医師の責任下で使用するコンパッショネート・ユース制度を我が国においても導入すべきである。」

 

 


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