1976年 厚生省発行 小冊子「大麻」

 厚労省の医療大麻に関する認識は、この資料にある1976年から変わっておらず、「古くは医薬品として使われた大麻は,現在では一般的に医薬品としての価値はないと評価されている」というもので、時代錯誤もはなはだしい。しかし厚労省はいまだにこの立場に固執している。日本は医療大麻のガラパゴスとなっている。

 

医療関係 V 57ページから (右の写真をクリック)

 

 V.医薬品としての大麻
1.医薬品としての大麻の評価
 大麻が医薬品として使用きれた歴史は古く,中国では紀元前2000年代に鎮静剤として使われていたようである。また,紀元後200年頃にも中国の魏で大麻を配伍した全身麻酔剤が使用されていたとの記録がある。

 

 インドにおいても1000年も前から,大麻が医薬品として使われていた。即ち”アユルベダ”と呼ばれるインド古来の医薬品体系や、”unami”と呼ばれるアラビア(回教徒社会)から伝来した医薬品体系において,不眠症,神経過敏症,消化不良,下掬,赤痢,神経痛,神経炎, リューマチ,フケ,痔,らい病,便泌等に使われていた。また催淫剤としても用いられていた。

 

 アルゼンチンでは,破傷風,うつ病,せん痛,淋病,肺結核,喘息等の万能薬として,ブラジルでは,鎮静,催眠剤,喘息薬として,またアフリカでは土着民の問で炎症,敗血症,赤痢,マラリア等に用いられていた。

 

 欧米に目を転じてみると,イギリスにおいては,1800年代にインドで生活したことのあるO’shaugnessyが,心身の苦悩の治療や疼痛,筋肉痙攣破傷風.狂犬病,リューマチ,癲癇に使用しているし,アメリカでも1800年代に破傷風から肺結核までの万能薬として使われていた。

 

 このように古くは医薬品として使われた大麻は,現在では一般的に医薬品としての価値はないと評価されている。国連麻薬委員会(Comission on Narcotic Drugs , UN)でもこの問題について討議している。第3回委員会(1948年)以来,大麻の医療目的への使用禁止問題を検討し,第9回(1954年)の同委員会においてこれを「大麻の医療目的への使用の中止を検討すべきである」との決議を行い,国連経済社会理事会に提出した。同理事会は,折りからチェコスロバキア等数ヶ国で大麻の成分であるカンナビジオール酸(CBDA)に抗菌性作用があることに注目し,これが研究の途上であったため, この点についても考慮しつつ,WHO(世界保健機関)に対して大麻使用について検討を求めたところ,「大麻製剤は陳腐化したものであり,抗菌性物質等の有効物質の抽出原料としても有益であるとは認められない」との回答がなされている。その後1961年に締結された”麻薬に関する単一条約〃では医療目的への使用までは禁止しなかったものの,ヘロインと同等の厳しい国際統制下に置くことにした。ー搬に欧米においては大麻は医薬品としての評価は低く時代遅れのものとされており,実際に薬局方から除外(例えばイギリスは1932年)している国が多く,わが国でも大麻製剤は第五改正日本薬局方までは収載されていたが,以後は削除されている。

 

 現在でもなお,インド,パキスタン,イラン等のアジア地域やアフリカ地域,アルゼンチン,ブラジル等の南アメリカ地域で大麻を医薬品として用いているようだ。

 

 最近のアメリ力の報告のなかでバージニア医科大学の研究グループが大麻の主成分であるTHCに免疫反応力の低下作用があることに着目し,人工移植に活用することを考え,ハツカネズミに異体からの臓器移植を行い,それと同時にTHCを投与する実験を行った。その結果,移植された臓器の生存期間が約46%延長された。また,ガン細胞抑制のためにTHCを投与した実験もある。しかし,これちの実戦によっても将来THCが医薬品として有用になるかどうかは推測できない。

 

2.わが国における医薬品としての大麻
 わが国においても,大麻の医薬品としての応用について記した幾つかの文献がある。
1590年に中国の李時珍により編さんされた「本草綱目」(1892種の医薬品が収載されている)がわが国にも伝えられている。同書には,”麻仁酒〃と云う医薬品が紹介されている。その効能,用法は「骨髄,風毒痛にして,動くこと能ざるものを治す,大麻子の仁を取り,炒香袋に盛り酒を浸してこれを飲む」と説明されている。また,「古今要覧」には”芋がらの黒焼”が「積聚,癇症に用いてよし」と記されている。更に江戸時代の名医,原南陽は,その著書「双柱偶記」(1800年の編さん)の中で「しまんだらげ・朝鮮あさがお・・)を火麻子花(注:大麻の雌花穂)等分と共に熱酒三銭を調服すれば,昏昏として病の如く,手足不仁し或は甘睡して醒めず,或は神心守らず風狂の如く三二日にして故に復す。然して其性は人々異なり,又死の如き者ある」と記しており,大麻花穂をまんだらげと供用し,麻酔剤として使用したことを伝えている。

 

(中略)

 

 近代に入ると「万病治療皇漢薬草図鑑」に大麻を煙草に混じて吸うと喘息に効果があり,また便秘,月経不順によいと記されている。
 日本薬局方は1886年以来公布されているが,その第一版には”印度大麻草”及び”印度大麻草エキス”が鎮痛,鎮静若しくは催眠剤として収載され,また1906隼の第三改正で”印度大麻チンキ”が追加収載された。これらは,1951年の第五改正日本薬局方まで収載されていたが,実際には余り使用されず,第六改正日本薬局方において削除され,それ以後収載されていない。

 


 

(注:中国文献等の漢字で、変換不能なものは誤字のまま載せてあります。今回のHPの資料としては、誤字のままでも、あまり大きな意味的影響がないと考えました。資料として使用の場合は、必ず原著をご参照ください。:国立国会図書館でSD74/19)

 


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