「大麻規制見直し 医療目的緩和の動き」(東京新聞9月24日朝刊見出し)

 

  WHO ECDD(国連依存性薬物特別委員会)が大麻のカテゴリー見直しを推奨

 

  2018年6月、世界保健機関(WHO)の依存性薬物特別委員会(ECDD)が開催された
 委員長は国連事務総長に「麻薬に関する単一条約における大麻のカテゴリー見直しを推奨する」という手紙を提出した。

 

  「麻薬に関する単一条約(以後単一条約)」は1961年制定され、日本は1964年に加盟した。(外務省訳) 
  薬物を「濫用」「悪影響」の度合いから分類し、大麻はカテゴリーⅠ(付表Ⅰ)とⅣに入れられた。
  カテゴリーⅠには、モルヒネ、ヘロイン、メサドン、あへん、コカイン、大麻、大麻樹脂など106種。Ⅱにはコデイン、ジヒドロコデイン、エチルモルヒネ、ⅣにはⅠに含まれたもののうち、最も厳しい統制措置を要求される物質が含まれ、大麻やヘロインなどはⅠとⅣの両方に分類された。ただ、濫用と悪影響については、何を根拠にしているかははっきりしない。
  この条約は国際間取引に関する規制に重点が置かれており、加盟各国にその目的に沿った規制を求めている。イギリスがインドで栽培させたアヘンを清国に売りつけてアヘン戦争の原因になったり、中国大陸で日本が戦費調達にアヘンを利用したなどという反省から、規制が必要とされた。

 

  この条約は麻薬の医療利用を規制から除外している。
  「前文 締約国は人類の健康及び福祉に思いをいたし、麻薬の医療上の使用が苦痛の軽減のために依然として不可欠であること及びこの目的のための麻薬の入手を確保するために適切な措置を執らなければならないことを認め、(中略)麻薬の使用を医療上及び学術上の目的に制限し(後略)」 
  「2条5(b)ただし、医療上及び学術上の研究(締約国の直接の監督及び管理の下にまたはこれに従って行われる臨床試験を含む)にのみ必要なこれらの薬品の数量については、この限りではない)」などと規定されている。
  つまり大麻の医療と学術上の研究は、この条約ができた当初から規制から除外されている。しかし日本は臨床試験を始め、医療と研究などを懲役刑で禁止している。
  今回、ECDDは大麻をカテゴリーⅣに入れておくのは適切ではないと判断した。2018年11月には委員会が開催され、2019年春には国連総会で投票により決定される。
  最近、いくつかのメディアが「WHOが条約制定後60年、初めて大麻の見直しを提案」と大きく報道した。
  日本で大麻合法化を唱える人たちのなかには「WHOが変わればアメリカ連邦政府も変わるだろう。そうすると日本も変わらざるをえなくなる」という考え方をする者がいるが、それは間違っている。
  アメリカは1970年、規制物質法を制定し、大麻は「濫用の危険性はあるが、医療用途はない」というスケジュールⅠに含まれている。これに対して、大麻合法化運動を担ってきたNORMLなどの団体が、大麻をスケジュールⅡに移すことを要望してきたが、50年経った今も実現しておらず、連邦政府は大麻は医療利用も違法であるとの立場を崩していない。
  WHOが何を勧告しようと、連邦政府がこれまでの厳しい立場を変えることは期待できない。特にトランプ政権セッションズ司法長官は「今後嗜好目的で合法化する州は徹底的な措置をとる」と述べている。アメリカで医療大麻を合法化する州が過半数を超えれば連邦法も変わるだろうという期待ははずれ、合法州が49州になっても規制物質法が変わらない可能性もある。
  つまりWHOが変わりアメリカ連邦政府が変わり、そして日本が変わるという考え方は、口を開けて待っていれば棚からぼたもちが落ちてくるというのと同じである。

 

  医療利用に関してはWHOが変わらなくても、いつでも合法化できるのである。
  単一条約には「締約国の憲法と関連法規の範囲において」という言葉がよくでてくる。それは憲法が人権擁護や生存権を保証しており、その立場から大麻を合法化してもかまわないという意味で、現在、多くの国が医療大麻を合法化する根拠となっている。
  私達は私達の力で医療大麻を合法化しなくてはならない。

 

  それでは今回のWHOの大麻見直しは日本とまったく関係がないかというと、そうではない。厚労省はこれまで「大麻はWHOにおいても最も危険なスケジュールⅣに含まれている」ことを理由に、大麻取締法4条の正当性を主張してきた。しかし、今後はそれが言いにくくなる。
  日本にとって最も大きな影響は、ECDDの資料(Pre-review , Critical review)を見てもわかるように、科学的・医学的な臨床試験や調査報告の結果、大麻には医療価値があることがはっきりしてきたということである。
  WHOが有害性(リスク)はあるものの、医療効果(ベネフィット)の方が大きいとしているものを、懲役刑でもって禁止することはできない。それは世界人権宣言に反することでもある。

 

 


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