断末魔の大麻取締法

  法律が変わるとき、いろんな矛盾が吹き出す。時代と社会の変化に適合しない法律に対して、いろんな犠牲や抵抗があって、ようやく古い法律を変える必要性を国民が認識し始める。当然、それまで正しいとされてきた法律を守らせる側は、法の修正を求める声を抑えようとする。しかし、どこかで必ずほころびが出る。それが現在の日本の状況である。
  最近、海外で大麻に関していくつか大きな動きがでてきた。当局は日本人が「感化」されないように、そして古い法律を維持できるように必死になっている。
  しかしいくら日本人がウブで騙されやすいといっても、真実はいつまでも隠しておけない。

 

 

 

1.カナダで大麻完全合法化

 

  2018年10月、カナダ首相の選挙公約通り、嗜好を含む大麻が全面的に合法化された。
  それにあわせて、日本人がカナダで大麻を購入して吸った場合、日本に帰ってから処罰される恐れがあるのかという疑問が出てきている。日本人スノボー選手がカナダで吸って、当局に処罰はされなかったものの、オリンピック出場資格を停止されたことがある。日本に帰国後、処罰されるかされないか関心をもつのは当然である。
  大麻取締法二十四条の八は「第二十四条、第二十四条の二、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う」としている。刑法第二条は「以下の犯罪は国外犯も国内犯と同様に扱う」として、「内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助」「外患誘致、外患援助(外国軍が日本に攻め入ってくるのを助ける)」などをあげている。海外での大麻所持が内乱、陰謀と同列に並べられているという点だけをみても、この法律はおかしいのではないかと考える人も多いだろう。大麻に刑法二条適用は、厚労省が大麻を日本と世界を壊滅させる恐ろしい薬物だと考えてきたことの証明といってもいいだろう。まるで幻覚か被害妄想だが、法律がある以上、適用の可能性はある。
  一方、大麻取締法二十四条の八は第四条三項(大麻から製造され医薬品の施用を受けることの禁止)、および二十四条3の1と2項(施用を受けることの禁止)は除外している。つまり、国外で施用を受けることは刑法2条の適用外であり、罰せられない。
  しかし、医療利用しようとすれば、どこかで入手して所持しないとならず、二十四条の二「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。」にひっかかる。
  そこで当NPOは海外での医療目的利用は、医師の診断など合法的手続きを踏むのだから、「みだりに」にあたらないと主張した。
  しかし「みだりに」というのは、通常、「法に違反して」というような意味で、法的用語としては明示的ではなく、あまり重要性がない。これまで日本の大麻裁判で「みだりではありません」と主張して争ったことが何度もあるが、すべて退けられてきた。「みだりかみだりでないか」で争っても意味がないということになる。
  しかし、次のような弁護士の意見がある。

 

  園田寿甲南大学法科大学院教授、弁護士
  「カナダで大麻を使用して帰国した日本人旅行者や留学生は大麻取締法によって処罰されるのだろうか

 

  内容は一言で言って、歯切れが悪い。それは「みだりに」という曖昧な言葉をキーワードにして論じているからである。
  「大麻取締法は、日本に大麻が蔓延することを防止し、さらに薬物犯罪取締りについての国際協調などの必要性があって、海外での大麻所持その他の行為に罰則を適用する規定を置いているのです。」ということだが、実際は「海外で大麻を経験してこれまで規制当局が言ってきたような有害性がそれほどないことや、大きな社会的問題になっていないこと、医療利用を禁止している日本の大麻取締法四条はおかしい」と気がつくことを恐れているのではないか?もし、大麻が蔓延することを防止するのが目的なら、税関検査を厳しくするのが妥当である。また、「麻薬に関する単一条約」など国際条約は、国外犯規定を要求していない。(さらに弁護士の言う「世界主義」は日本と世界の関係であって、対象をカナダに限定して論じるのは不合理である。)
  いずれにしても大麻に国外犯規定は妥当かどうかを考えるにあたって、「みだりかどうか」が決定的になるという議論は不毛である。
  「みだり」はいったいどんな内容で、誰が決め、誰が判定するのかがわからないまま、当局にとっては違法性の可能性があるとして、逮捕したい人を逮捕したいときにできるような都合のいい法律として働く恐れが強い。
  憲法31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めている。内容は(1)手続が適正でなければならないこと、(2)実体もまた法律で定められなければならないこと(罪刑法定主義:ざいけいほうていしゅぎ)などである。つまり、「みだりかどうか」というようなどうとでもとれる条項ではなく、国民の誰もがわかる立法趣旨に基づいた罪と罰を明示しないとならない。
  外務省は次のような注意喚起を呼びかけている。

 

  【要旨】本年6月21日に成立しました「カナダにおける大麻に関する法律」が10月17日より施行されます。一方、日本の大麻取締法において、大麻の所持・譲渡(購入含む)等については違法とされ、処罰の対象になっております。この規定は海外において行われた場合でも適用されることがありますので、在留邦人や日本人旅行客の皆様におかれましては、これら日本の法律を遵守の上、日本国外であっても大麻に手を出さないよう注意願います。

 

  「適用されることがある」ということは「適用されないことがある」ということでもあり、どういう場合が適用されてどういう場合が適用されないのか、外務省には説明責任がある。
  NPO医療大麻を考える会としては、日本国内で大麻を使った医療が未だ不可能な状態において、海外での治療で患者が処罰される恐れがわずかでもあるということは重大な問題であると考える。
  患者のなかには、あえて違法行為を犯してでもカナダで治療を受けたいという者が多いことを付け加えておく。 (文責 前田)

 

 

 

 


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