医療用医薬品「ヒロポン」 (昔の名前ででています)

   ヒロポンといえば、日本の敗戦直後の第1次覚醒剤ブームで流行し、大きな社会問題になった薬物である。戦時中、軍需工場などに動員された国民が、眠気や疲労がポンと飛ぶ薬として合法的に使っていたものが、敗戦の混乱時に市中に流れ出た。多くの人が「ポン中」と呼ばれる依存症に陥り、犯罪を犯したり、非衛生的な注射器から病気になったりした。その後、規制によりヒロポン禍は減少した。
  現在は第3次覚醒剤ブームと呼ばれており、厚労省は覚醒剤がもたらす害悪や恐ろしさを、ほとんど脅迫的なまでに宣伝している。覚醒剤依存症者は、かつてアルコール依存症者が「アル中」と呼ばれ、意志の弱い、社会的落伍者として扱われてきた以上に、社会的な迫害を受けている。依存症は病気というより、犯罪として扱われる。
  しかし、厚労省があれだけ有害で恐ろしいとしている覚醒剤ヒロポンは、まだ販売されている。大日本住友製薬が製造し、昔の名前「ヒロポン」で販売している。薬価は1錠295.2円で経口摂取する。指定の病院や医師が製薬会社に注文すれば入手し、患者に処方することも、もちろん可能である。
  そんな恐ろしいものを承認している厚労省に責任はないのか?暴力団に横流しされていないのか?政治家に裏金が回ってるのではないのか?そんな疑問がでても不思議ではない。しかし、そのような非難は簡単だが、ほとんど意味はない。
  厚労省は次のように答えるだろう。
  「ヒロポンは臨床試験を通して、効果と安全性については確認している。国は公共福祉の観点から覚醒剤の「乱用」を防止しなければならない立場にある。乱用とは「違法に入手され使用された」という意味である。すべての医薬品には副作用という有害性があるが、副作用を抑えつつ効果を利用するのが医薬品である。覚醒剤には「ナルコレプシー(過眠症、居眠り病)、各種の昏睡、うつ病」などの効果があり、使用にあたっては反復投与により薬物依存を生じるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し、慎重に投与することとしている。」
  我々としては次のように主張すべきであろう。
  「覚醒剤にも薬効はある。危険で扱いにくい薬物ではあるが、使用方法と管理をきちんとすれば利用価値はある。一方、大麻にも薬効があり、覚醒剤と同様、臨床試験を通して効果(ベネフィット)と副作用(リスク)を明確にすれば、すでに海外の多くの国で医療利用されているように、日本でも大麻を医薬利用できる可能性は非常に高い。それをさせない現在の大麻取締法は、大麻があれば救われる可能性のある患者たちの憲法的権利を侵害している。厚労省は覚醒剤を、害よりも薬効のほうが大きいとして承認しているのに、大麻については、調べもしないで医療利用を禁止しているのは大きな間違いである。大麻はほかの薬物に比べて有害性が小さいが、もし仮に大麻に覚醒剤以上の有害性があるとしても、それをもって医療利用を禁止するのは不合理である」
  厚労省は「大麻を病院で処方すると、暴力団に流れたり、嗜好目的で使用するものがでてくる恐れがあるので、禁止している」と述べたことがある。しかしそれは(被害)妄想にすぎない。病院からヒロポンやモルヒネやコカインが流出したことは、少なくとも報道をみる限りない。
  覚醒剤は、アルコール、ニコチンなどを含めた依存症に対する政策の問題である。好奇心、あるいは病院で処方されたヒロポンが忘れられず、覚醒剤を違法に入手することになった人もいる。アメリカ司法長官は、アメリカでは毎年1万5千人が違法なヘロイン使用で死亡しているが、そのほとんどは病院で鎮痛剤として処方されていたモルヒネが効かなくなり、路上でより鎮痛作用の強いヘロインを入手して過剰摂取で死亡する場合であると述べている。司法長官は、大麻からヘロインに進むということはないと断言している。
  むしろ、大麻はその他の薬物による依存症の治療に役立つという研究報告があるが、脳内報酬系に作用しない、つまり依存性の小さい大麻の「快楽(たいしたものではないが)」が、その他の依存症に置き換えられないかといった研究が必要とされている。それらの研究が日本の覚醒剤やアルコール問題の解決につながる可能性もあるのである。できるだけはやく医療大麻を合法化し、研究と実用化に道を開くべきである。
  大麻取締法を管轄しているのは厚労省だが、日本の大麻(カンナビノイド)研究者は、厚労省に忖度(そんたく)するあまり、大麻は脳細胞を破壊するというような一方的な研究に忙しい。大麻は悪いという研究には研究費がつくが、医療効果があるという研究などしようものなら、予算は削られ、研究者としての地位も危なくなる。そんな状況は公正で科学的とは呼べない。医療大麻基本法(案) 2)で「独立した第三者機関の設置」を求めているのはそのためである。


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