(いきさつ)
逮捕
私(前田耕一)は大麻取締法違反(幇助)で、2003年10月28日、逮捕されました。逮捕容疑は、作家中島らも氏に長野県在住のK氏を紹介したというものです。(所持、栽培などではなく、単に紹介・幇助です)
罪名及び罰条
大麻取締法違反幇助 同法第24条の2第1項、刑法第62条第1項
(法廷における被告人供述調書)
(前略)
(弁護士)
「医療大麻を考える会」という会には,患者さんの会員という方もいらっしやるわけですか。
(前田)
患者さん及び患者さんの家族が,今,会員が150人ぐらいいるんですけれども,そのうち半分ですね,あとは支援者ということで,法律関係者,医者,看護婦,薬剤師などがいます。ジャーナリストもいます。
(弁護士)
あなたがその患者さんをKさんに紹介したということもあるんだそうですね。
(前田)
あります。
(弁護士)
それはどういう方をあえて紹介するんですか。
(前田)
外国の文献で,大麻が効果が非常にあって,しかもほかの治療法が非常に限定されているという,多発性硬化症,厚生省で難病指定されているんですけれども,その患者さんを2名だけ紹介したことがあります。ほかからも,効果があるんであれば何とか入手してくれないかという哀願というか,そういうものもありましたけども,私としては,ほかの方法を考えてくださいということで,断っておりました。
(弁護士)
あなたがK証人を紹介するというのは,K証人に大麻を調達して病気を治してもらってくださいという趣旨だということですよね。
(前田)
そこまでは分かりません,といいますか,Kさんにあるかどうかも分かりませんし,Kさんから栽培方法とか種をちょうだいして,自分で栽培するということも考えられますから,紹介した後はどういうふうになっているかというのは,余り聞いてません。
(弁護士)
紹介したときに,K証人からあなたのほうに紹介料が来るとか,あるいはK証人が紹介された患者さんに金銭を要求するとか,そういうことはないんですか。
(前田)
金銭関係は全くありません。私が紹介した患者さんと時々会っていたというふうな話は聞いていますけれども,1度Kさんにお金をもらっているのと聞いたら,いや,全然もらっていませんということは聞いておりまして,医療ということに関して言うと,Kさんはお金を全く取らない人だなというふうに認識しておりました。
(弁護士)
それで本件の話を伺うんですが,本件の依頼を,先ほど出てきた中島証人から受けたのは,平成14年の12月ごろということですね。
(前田)
はい。
(弁護士)
依頼の内容として,中島証人とあなたの言うところに調書上,多少食い違いがあるようですけれども,具体的にはあなたの記憶ではどういう依頼があったということなんですか。
(前田)
まず電話があって,ファックス送りますからということで,そのファックスを受け取ったら,緑内障で困っている,目が見えなくなるのが怖い,緑内障に卓効のある薬草があればいいのになという内容でした。
(弁護士)
具体的に大麻を送ってくださいとか,大麻を調達してくださいとか,そういうことはなかったんですか。
(前田)
そういう表現はありませんでした。
(弁護士)
でも趣旨はそういうことなんですよね。
(前田)
大麻が必要となっているんだなということは理解できました。
(弁護士)
先ほど中島証人の話からも少し出たんですけれども,あなたと中島証人は,会った回数としても,この平成14年12月までの段階で,1度か2度,中島証人の記憶では1度だけだというんですが,その方から,大麻を譲ってください,あるいは大麻を調達してくださいと言われたとしても,普通は譲る気にはならないんじゃないんですか。
(前田)
普通はそうかもしれませんけれども,私はらもさんの著作はもう10年,15年以上前からずっと読んでおりまして,らもさんのことは理解していましたし,私は自分の著書があるんですけども,その著書に解説を書いていただくのをだれにしますかと出版社に聞かれたときに,中島さんにしてくださいと言うと,多分中島さんならしてくれるだろうと思ってたんですけど,やっぱりしていただいたんで,私のこともちゃんと理解していただけてるんだなという,相互の,会った回数は少ないですけれども,その作品を通して信頼関係はあったというふうに思います。
(弁護士)
で,最終的にはあなた,大麻を調達する動きをすることにはなるんですけれども,それに至るについての主たる動機は,そうすると中島証人というのが,自分がある種尊敬をしている方だったからということなんでしょうか,それとも緑内障ということがファックスに出ていたから,それが真実だと思ったからなんですかね。
(前田)
ファックスが来た後,らもさんに電話をしたときに,私はまず緑内障の調子はどうですか,視野狭窄あるんですかというふうなことを,何回もしつこいほどに聞いたんですけれども、それは,らもさん,先ほども言ってられましたけれども,作家にとって目というものが多分,手以上に非常に重要なものだと思います,それは私自身,ものを多少書くのでよく分かるんですけれども,作家というのは,自分の書いた3行前とか数ページ前を見ながら,次の文章につなげていくわけで,もしそれがうまく見えないとなると,作家生命といいますか,そこまでかかわる重大なものであるということは私はすぐに感じました。ですので,緑内障だというのは,これは大変だというふうに認識して,その後も電話する度に,どうですか,どうですかと聞いたわけです。
(弁護士)
今日,証拠に出ました中島証人の既に確定した判決の中を読みますと,具体的に読みはしませんけども,大麻を乱用していたというような趣旨に読める部分もあるんですが,仮に治療ではなくて大麻を乱用していたのだとすると,あなたとしては調達するという動機になったんですかね,ならなかったんですかね。
(前田)
乱用というところは,ちょっと私は,彼の作品の中で読んだことはありませんが,もし医療目的でなかったとしたら,私は,「医療大麻を考える会」の代表でもあるわけですので,それ以外のことで,嗜好用とかそういうものでかかわると,もし何かあったときには,ほかの会員さんに迷惑が掛かり,会全体に対する誤解が生じることもありますので,もし中島さんが緑内障だということでなかったとしたら,何やかや理由をつけてお断りしていたと思います。
(弁護士)
大麻を授受するというのは,もちろん刑罰で禁止されているということは知っていますよね。
(前田)
はい。
(弁護士)
それでもやってあげたいほどの病気ということなんでしょうか,緑内障というのは。
(前田)
先ほども言いましたように,緑内障というのは,眼圧が高くなって,手術をしても進行が止まればいいほうで,また再発してだんだん悪くなっていって,最終的に目が見えなくなるという恐ろしい病気です。
(弁護士)
じゃあ簡単にその緑内障という病気を説明していただくことにしますが,緑内障というのは,どういう病気なんですか。
(前田)
目の中に水があるんですけれども,その水が増えていって,それで圧力が増えて,神経を圧迫して神経を駄目にしてしまうという病気で,原因は分かっていません。
(弁護士)
原因は分からないということは,根本治療はできないということですね。
(前田)
そうです。
(弁護士)
対症療法として,眼圧を下げるという治療はできるわけでしょう。
(前田)
すべての病気には何らかの治療法,全く治療法のないものはないと思います。ただ大麻の場合は,眼圧を25パーセントぐらい下げるということで,いろんな国際機関で研究され続けています。
(弁護士)
大麻が一番眼圧を下げる,目の圧力を下げるには効果があるというふうな発言と聞いていいんですね。
(前田)
そうです。
(弁護士)
ただ大麻は当然反面,害があるでしょう,それはまずいんじゃないですかね。
(前田)
害があると言いますが,いわゆるユーフォリアという,幸福感を得てしまうんですけれども,そういう精神活性作用があるというのは確かです。それが不快に感じる人はやめればいいわけで,むしろそういう精神的な作用というのが,病気の場合,うつ病とか,うつとかストレスとかそういうものが一杯かかるわけですから,それがそういう精神作用によってなくなって,病気に立ち向かうという気持ちになる場合も非常に多くて,それはむしろ害というよりも有益な作用だと思います。特にらもさんの場合は,アルコール依存がありますけども,大麻の活性,精神活性成分がそういう依存性の病気に対しても効果があるというふうなことは言われていますし,特にらもさんの場合は,高血圧が伴っていますから,高血圧の伴う緑内障には著効があるというふうにいろんな数多くの文献で言われております。
(弁護士)
端的に聞きますね。問題になっている害というのはおよそ2つあって,1つは,妄想を持ったり,妄想に従って人に迷惑を掛けたりするという害,もう1つは,大麻を始めると,いずれはコカイン,ヘロイン等,より強い禁止薬物に進むだろう害,それを言っているんです。その害はあるんじゃないですか。
(前田)
いや,いわゆる妄想,幻聴,幻覚というものはありません。ほかの薬物に進むかどうかということにつきましては,アメリカの国立医薬研究所で否定されており,WHOもそのように言っております。また,今回は医療大麻の件について私は発言していますので,医療現場で使われる大麻が一般の乱用につながる,あるいはそれからほかのものにステップアップしていくというふうなこととは全く無関係だと思います。
(弁護士)
本件のほうに戻ります。それであなたとしては,じゃあ大麻を都合しましょうという気持ちになられたわけですね。
(前田)
(うなずく)
(弁護士)
で,代金のお話になりましたが,10万円という話はあなたから出たようですけれども,そうですか。
(前田)
らもさんに電話をして,じゃあ何とかしましょうというふうに話をしたんですが,その後,Kさんに電話をして,どうですかと言ったら,いいよというようなことだったので,またらもさんに電話をして,当時年末だったもんですから,1月の初めごろ僕は大阪に帰るんですけれども,そのときに何かいいことがあるかもしれないよと言ったら,らもさんが,ああ,そうですか,ああ,うれしいですね,幾らぐらいですかと言ったので,私は,幾らでもいいんじゃないですかと言ったんですが,それだったら困るということで,やり取りがうまくいかないと思ったので,とっさに,じゃあ10万円ぐらいでいいんじゃないですかというふうな言い方をして,その場をまとめたわけです。
(弁護士)
先ほどの話では,Kさんは患者さんに上げるとする場合はお金を取らないというような話をしてたわけでしょう。今回も中島証人は,有名人ではあるけれども患者さんなんだから,お金が要らない人なんですと説明してもよかったんじゃないですか。
(前田)
いや,それはそのときはまだ,私が調達して持っていくと思っていたと思います。まだKさんの話は全然していませんでしたし,私とらもさんの間のことで,いや,それじゃ困ると言われたんで,まあ適当に,とっさに10万円と答えたわけです。その後,Kさんとその話は全然していません。
(弁護士)
そのKさんの話に移りますが,そうやってあなたと中島証人との間で,平成14年12月ごろに大麻を調達しますという話がまとまったわけですね,
それであなたとしてはKさんから調達しようと思ったわけでしょう。
(前田)
はい。
(弁護士)
Kさんのほうに連絡取りましたね。
(前田)
はい。
(弁護士)
K証人にはどういう話をしましたか。
(前田)
僕の知り合いで,大阪にいる人なんですが,緑内障で困っていると言っているんですよって言ったらKさんは,ああ,そう,分かったと,それぐらいだったと思います。それでともかく調達できるということが分かったので,それからまたらもさんに連絡したわけです。
(弁護士)
先ほどのK証人の話では,自分が尊敬する中島さんの名前が出たので,中島さんには当然持っていきたいと思っているんだという話でしたけども,そういうお話で進んでいたんじゃないですか。
(前田)
いえ、それはKさんが勘違いしていると思います。私は最初に連絡したときは,らもさんの名前は全然出していませんでした。というのは,もし話が頓挫した場合,後でKさんのほうから,実はらもさんが欲しがっていたんだよということで,そういう話が残ってしまうのが嫌だったので,多分2回目以降,3回目ぐらいだったかに,実はあればらもさんなんですという話をしたんです。
(弁護士)
そうすると,あなたの認識では,K証人が大麻を持ってくるとしたら,それは治療のためなんだと,単に嗜好用ではないんだという認識だということになるんですか。
(前田)
私はKさんには病人しか紹介していませんし,Kさんも,私が紹介する人はすべて病人だと思っていますから,らもさんの名前を出す以前から,それは緑内障の人なんだというふうに考えていたと思います。ただららもさんの存在というのが彼にとってはインパクトがすごく大きかったので,記憶が前後しているんではないかと思います。
(弁護士)
あなたがKさんに連絡をして大麻を調達してほしいと言ったとき,当然代金はどうするかという話になるんじゃないかと思うんですが,どうすると決めたんですか。
(前田)
いや,代金の話は全然出ませんでした。それはまあ,それ以前に紹介した人から彼は全然お金をもらっていないということでしたし,ほかの人にもただで上げているという話を聞いていましたので,お金の話は全然出ませんでしたし,らもさんも何グラムというような話もなかったし,Kさんにもそういう数量の話も全然していません。
(弁護士)
中島さんは払うと言っているわけですから,それを受け取らせないというわけにはいかないんじゃないんですか。
(前田)
その辺が一番困ったんですけど,うどんすき屋さんでKさんが物を見せて,らもさんが見たときに,らもさんがそのとき初めて自分はKさんから調達されるんだということが分かったようで,袋を開けて中を見たときに,これが10万円ですかと言って,10万円でええんですかというふうに非常に驚いていたのを覚えています。それでそのときに,私とらもさんの間では,お金は後で立て替えるという話をしていたんですけれども,もちろんKさんはそういうこと全然知らないわけですから,そこでらもさんが10万円の話を出してきて,そしたらそのときにKさんは,いや,おら,お金はいいだよみたいなことを言ったものですから,ここで自分がお金を出したら何かもめるというか,ほかのお客さんもいる手前で,そういうことになるのが嫌だつたもんですから、Kさんに対しては,くれると言ってるんだからもらっておけばいいじゃないかと言って,らもさんに対しては,後で払っておきますからと言って,まとめたものです。
(弁護士)
要するに,中島さんの代金についての認識とKさんの代金についての認識については,そごがあったということですよね。
(前田)
らもさんは,もともとKさんに払うというふうな気持ちでは全然なかったと思います。
(弁護士)
ただあれでしょう,あなたが立て替えるという話も,平成14年12月以降出ていたわけだから,そういう意味では,あなた以外のだれかに払うというつもりはあったんでしょう。
(前田)
いや,立て替えるというか,今,お金がないからという表現であって,立て替えると言ったのは,後から取調官がそういうふうな言い方をしただけです。
(弁護士)
その上で,平成15年の1月5日ごろに,梅田の飲食店で,あなたと中島証人とK証人が会合を持ちましたね。
(前田)
はい。
(弁護士)
その会合の中で,あなたやK証人は,中島証人に現在の病気の状態は尋ねましたか。
(前田)
尋ねましたが,私がらもさんにということですか。
(弁護士)
はい。
(前田)
尋ねましたけども,それ以前に電話でかなり聞いていましたので,まあ簡単に,どうなんですか,最近はというような話はしました。
(弁護士)
あなたがやっている「医療大麻を考える会」という会には,緑内障の方は参加されておられるんですか。
(前田)
おりません。
(弁護士)
そうすると,中島さんから病状を聞いても,それがどの程度重大なものか分からないということですね。
(前田)
そうですね,ただ緑内障というのは失明に至る病気であって,治療法がない,あるいは限られているということは知識がありましたし,実際に町のお医者さんで,眼医者さんで,緑内障というのは治るんですかと言ったら,そんなもの治りまぜんよと即座に言われて,ああ,大変なんだなというのは以前から知っておりました。
(弁護士)
それでその梅田の飲食店で,K証人から中島証人に大麻を渡されたということですね。
(前田)
はい。
(弁護士)
先ほどのK証人の話では,あなたを介して中島証人に大麻の袋を渡したというように言っていましたが,そうだったんですか。
(前田)
いや,それは私は見てましたから,のぞき込んだのはのぞき込んだんですけど,私が受け取ってそれをらもさんに渡したということはありません。
(弁護士)
代金はそのときK証人に渡しましたか。
(前田)
いや,そこで渡そうとすると,もめるというか,Kさんが,おら,要らねと固持するというのが分かっていましたから,そのときは,もらっておけと言っただけで,ふうんというようなものでしたと思いますけど、らもさんも,じゃあ前田さん,必ず送りますからということで,うやむやというか,何とかもめるのを収めたという感じですね。
(弁護士)
で,あなたからK証人には,いつどうやってお金を渡したんですか。
(前田)
うどんすき屋を出て,地下鉄御堂筋線に乗って難波へ行く途中に,電車の中で,Kさんのポケットの中に無理やり突っ込んだという感じです。というのは,らもさんが後でお金を送ってくるということはほぼ確実だったものですから,私としては,そのお金の処理に困ったというか,私が頂くというのは変というか嫌ですし,またあれ,お金もらったんだろうみたいな,なんか変なことになるのが嫌だったものですから,その処理という感じで無理やり突っ込んだんですけれども,私としては,その後らもさんが送ってくるとか送ってこないとかいうのは,余り,送ってこなくてもよかったし,ほとんど関心がありませんでした。
(弁護士)
K証人のほうも,渡されたお金を返したりはしなかったんですね。
(前田)
そうですね,ああ,そうというふうなものだったと思います。
(弁護士)
先ほどの大麻一般の話からすると,あなたのおっしゃる意味では,大麻は全面的に合法化してもいいという意見でもあるわけですよね。
(前田)
大麻はいろんな役に立ち,まあ嗜好用に吸っても,今まで言われているような,頭がおかしくなるとか,何か中毒症状が起こって禁断症状が起こるとか,厚生省はそういうことを言っていますけども,そういうことは全然ないわけですけれども,今,現状ある大麻取締法によって最も被害を被っているのは,大麻があれば治る病気を持っている病人たちなので,まずこういう人たちに与えられるべきだというふうに,それは分けて考えております。
(弁護士)
取りあえず著しく必要なのは患者の方であると,そういう認識で,今回の裁判に臨まれていると,そういうことなんですか。
(前田)
そうです。
(検察官)
一般的な認識を確認しますけれども,一般的に大麻を譲り渡したり所持しちゃいけない,悪いことだと一般的に認識されていることはあなたは御存じですか。
(前田)
違法性の認識はあります。
(検察官)
で,ちょっと事実関係で確認しますけれども,Kから中島裕之のほうに渡されたものが大麻であるということは,あなた,分かっていたわけですね,
(前田)
分かってました。
(検察官)
それで1点分からないんだけれども,あなた,逮捕された直後,知らなかったというふうなことを述べていますね,それはどうしてなんですか。
(前田)
私がかかわったことではないという,そういう関係性を否定するためにうそを言いました。
(検察官)
別にあなたは,そもそも大麻取締法違反が医療目的についても違法だとしていること自体,おかしいと言っているわけですよね,知っているんだったら,堂々と分かっていましたと述べたらよかったんじゃないですか。
(前田)
まあそこは,刑罰と自分の主張をてんびんにかけたわけですね,刑罰を受けても構わないというふうに考えて主張を変えたわけです。
(検察官)
今後も同じように,緑内障の患者さんとかから頼まれたら,同じような口利きというか,そういうふうな行為しますか。
(前田)
うーん・・・まあそういうことがないように大麻取締法第4条,第3項が憲法違反であるということを認めていただいて,法律を改正していただきたいんですが,実際に大麻があれば病気が治る患者さんを前にして,そういうことは絶対しないという自信は今のところありません。
(裁判官)
あなたがKに渡した10万円のことについて聞きます。その10万円というのは,あらかじめ用意してあったんですか,それとも別に用意はしていなかったけれども,財布に入っていたという感じなんですか。
(前田)
私は,会社の経営をしておりまして,財布の中にはいつも何十万円か入れておくようにしています。ですからそれが用意したものか,あるいはまたなかったら後日ということになっていたかもしれません。だからその10万円はその目的のために準備したとは言えないです。
(裁判官)
例えば10万円だけ封筒に入れて用意してあったとか,そういうわけではないんですか。
(前田)
いや,そういうことではありません。電車の中で出したときにも、財布の中から出して1,2,3と数えて,ぱっとポケットの中にねじ込んだという形です。
(裁判官)
あなたの捜査段階の調書だと,いつどのように渡したかについての供述がはっきりしていないようなんだけど。
(前田)
いえ,それは私ははっきり言いました。それは最初は2人がまあ,これこれこうで立て替えたうんぬんという話は出ているんですけれども,その後のほうで私は,それは渡した場所というのは実は違いますよということで,私の調書の中ではそういうふうになっているはずです。
(裁判官)
あなたの検察官に対する供述調書の中で,お金をKに渡したのはいつか,はっきりと覚えていませんが,店を出た後だったように思います,店内で,大麻の授受があったときではないか,この点ははっきりしませんが,もしKさんや中島さんの方でそのように言われるなら,それで間違いないですというようなやり取りが記載されているんだけど。
(前田)
その後,否定したんですが,例えばうどんすきを食べた店が,2人はこう言っているぞというふうなことで,写真も見せられて,2人は間違いないと言っているからそうしとけというふうなことがありまして,取調官がこう言っているんだから,これでもまあいいだろうというふうな言い方をされたもんで,もう、かわいそうだなと思って,このぐらいでと思ったんですけど,うどんすきの店は明らかに違います。それからそのお金渡した部分も,私の記憶ははっきりしています。
平成16年2月10日
大阪地方裁判所第13刑事部
裁判所速記官 藤平千穂
(資料) 「緑内障について」