医療問題への応用 (在宅医療・病人の食欲不振・うつ病)

  大麻の「鎮痛効果と社会・経済」的側面については、すでに述べた。
  ここでは今後高齢化する日本で、医療費削減という観点を含めて、大麻が社会問題を解決するのにどのように現実的に役にたつか考えてみる。

 

(在宅医療・介護への応用)

 

  疼痛がうまく管理されれば、入院を続ける必要がない患者は多い。特に高齢者の退行性慢性疾患は、長期の入院より、自宅で在宅医療を続けたほうが、QOL(生活の質)という点でも患者のためになることが多い。病院の給食より家族が作ってくれる食事を取り、好きな音楽を聴き、好きな映画を見る。自分の性格や個性をわかっている家族に介護され、子供や孫と療養生活を送る。
  厚労省の多くのデータも「自宅で療養したい」「自宅で死を迎えたい」人が過半数であることを示している。
  そこで患者が心配するのは、痛みをうまく抑えられるかということであり、医師が心配するのはモルヒネ系鎮痛剤などの依存症にならないかということである。
  大麻には依存性がほとんどなく、毎日使っても効果が落ちる(耐性上昇)ことはない。
  また大麻にはモルヒネ系麻薬のもつ便秘という副作用がなく、患者と介護者にとって都合がいい。

  大麻の鎮痛効果は、日本の医療、特に在宅医療・介護に大きな変化をもたらす。社会制度や医療システムを変更しないとならないが、医療経済学的にみれば、在宅医療は社会全体の医療費削減につながる。

 

(食欲不振と大麻)

 

  病人は食欲がなくなると体重が急速に減少し、体力も落ち、病気の進行がはやくなる。
  人間は食物から栄養を摂り、それをエネルギーに変えるようにできている。このサイクルが回復しないと病気もよくならない。

  しかし食欲そのものを回復させる薬はほとんどなく、消化薬や胃薬を投与するぐらいしかない。ステロイドなどのホルモン剤で食欲が増進することもあるが、副作用が強く、長期使用は望ましくない。
  国立がんセンターの研究によれば、末期がん患者の悪疫質と呼ばれる症状のひとつに食欲不振がある。これといった治療法はないが、大麻には効果がある。
  大麻には副作用として味覚や嗅覚を敏感にする作用があるが、それも患者の食欲回復に効果がある。大麻を摂取すると「食欲がでて、しかもおいしくなる」というのは多くの人が経験することである。食べることは、生きる喜びである。
  食欲は痛みや不眠によっても減退するが、大麻を医療的に利用することで、疼痛緩和や睡眠効果も同時に期待できるので、食欲不振の患者には救いとなる可能性が大きい。
  がんだけではなく、多くの病気には食欲不振がともなう。大麻を食欲不振に利用できれば、回復が速くなり、結果的に医療費削減につながる。

 

(睡眠とうつ病と大麻)

 

  眠りは心と体の疲れを癒す。
  しかし、病気になると眠りが浅くなり、眠れないことで症状はさらに悪化する。
  不安や心配事があってもうつ状態になり、眠れなくなる。日本では年間3万人が自殺するが、その多くは不眠とうつ症状を伴うと推測される。
  10年ほど前、テレビで「うつは心の風邪、できるだけはやく精神科で診てもらって薬で治しましょう」というキャンペーンがはられた。しかしうつの多くは社会的ストレスが原因で、原因をそのままにしておいて薬で治ると考えるのは、医師と患者のどちらも安易である。
  アメリカの調査では、うつ病の治療では50%が再発し、25%は治療に2年以上かかっているという。日本では、ほとんど患者の話を聞かないで、大量の精神薬の投与を行う医師もいる。同じうつ病なのに病院によって診断が異なることも多い。それはうつ病治療には確立された診断法や治療法がないということを意味している。
  抗うつ剤や抗不安薬には、麻薬や覚せい剤なみの依存性や副作用の強いものがあり、よくなるどころか悪化したと訴える患者は多い。
  海外の製薬会社が始めた「うつは心の風邪」キャンペーンが功を奏し、日本は抗うつ剤の巨大マーケットになっている。製薬会社の営業戦略に乗って、多額の医療費が投入され、そのため国民に重税が生活にのしかかり、うつ病患者と生活保護受給者がますます増える。このような状態は製薬会社と病院経営者には歓迎されるが、社会にとってはマイナスにしかならない。
  大麻にはうつ気分の改善や睡眠作用があることが知られている。依存性や耐性上昇はアルコールやタバコ以下で、言われているほどの副作用はない。統合失調症になるという説がよく引き合いにだされるが、実際は根拠が薄く、マスコミが報道するように「バカになる」(NHK番組より)こともない。
  病院で薬をもらった患者の半数以上が治らないような状況下では、大麻をうつ病治療の選択肢のひとつとしてもいいのではないだろうか。実際、欧米の医療大麻合法国では、ほとんど例外なしに、大麻をうつ病に処方している。

 

(自殺・うつによる社会的損失)

 

  厚労省の調査によると、自殺やうつ病がなくなった場合、経済的便益の推計学は2009年単年で約2兆7千億円になり、2010年でのGDP引き上げ効果は約1兆7千億円になる。(平成22年9月7日障害保健福祉部精神・障害保健課
  大麻には睡眠をもたらす作用があるが、多くのうつ気分は、昔から言われているように「ひと晩、ぐっすり眠ればよくなる」ことが多い。
   一方、「抗不安薬」としてよく処方されるベンゾジアゼピン系医薬品は、麻薬並みの肉体的精神的依存性があり、対薬症状に苦しむ患者が多い。

 


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