いわゆる「大麻精神病」について

   一連連の大麻所持容疑事件報道で最近ワイドショーなどに出演し、「大麻を使用すると『大麻精神病』を引き起こす。相模原の障害者施設を襲撃した容疑者も大麻精神病が原因だった」と断定する薬理学者やタレント医師がいる。
  しかしWHOは1997年、「このような障害が実際に生じるかどうかについてはさらなる調査が必要」と述べ、「大麻精神病」の存在について断定することを差し控えている。
   一方、薬物犯罪を取り締まる立場の国連薬物犯罪事務所(UNDOC)は、「大麻精神病」の存在については確認しておらず、それは厚労省が翻訳した報告書にも明記されている。
  根拠のない大麻精神病という病気を大量殺人の原因と断定し、今回の逮捕事件と混同させるような発言や、それを検証せずに垂れ流すマスコミの姿勢には、大いに問題がある。

 

  以下、山本医療裁判で提出し採用された証拠から抜粋する。

 


 

 

<精神病を引き起こすかどうかについて>

 

  厚労省のホームページにその訳文が掲載されている国連薬物犯罪事務所(UNDOC)発行の世界薬物報告書(2006年)第2章「精神的障害」の項に、次のような記載がある。
  「大麻の急性の影響に関しては、大量に使用した場合には、呼吸困難、パニック、妄想、「大麻精神病」を引き起こす可能性がある。1997年に、WHOは、このような障害が実際に生じるかどうかについてさらなる調査による証拠収集が必要であることを明らかにした。しかし、最近の研究から、大麻を極めて大量に服用すると、軽い精神障害を引き起こすが、そのような状況は極めてまれであることが判明した。」
 つまり、WHOは1997年の報告書「大麻:健康上の観点と研究課題」では「大麻精神病」を引き起こす可能性を指摘していたが、実際に生じるかどうかさらなる調査をしたところ、いずれも極めて大量に使用した場合であり、しかも、軽い精神障害を引き起こすことすら極めてまれであるという結論に達したのである。
  「大麻精神病」の定義は確立されておらず、大麻により引き起こされる精神病及び類似の症状だとすれば、その症状も極めて大量に使用した場合に軽い精神障害がでる程度だと言える。
  また、報告書には、大麻の大量使用後に一時的なマイナス効果を報告した人がかなりの割合に達することが明らかにされていると記載されているが、これはいわゆるバッド・トリップと呼ばれるもので、初めて大麻を使用した場合に起こることがあり、不安や心配などが強くなるが、上記引用文中にも書かれているとおり、一時的なものにすぎず、大麻の精神作用がなくなれば消える症状に過ぎない。なお、マイナス効果を報告した人の中にどの程度「精神障害」が出た者が含まれているかについて上記報告書では明らかにしていないことから、一時的な、しかも時間とともに消滅する症状を引き合いにだして「大麻精神病」がかなりの割合に達するということはできない。
  最近アメリカでは大麻の医療使用と嗜好利用を合法化する州が増えている。医療大麻をいまだに認めていないアメリカ連邦政府は、これらの州で「大麻関連で病院を訪れる者が以前より増えている」と発表している。しかしそれが仮に事実だとしても、それは初めて大麻を経験する者が増えた結果、その精神活性作用に驚くなどの一時的なマイナス効果がでたものであり、大麻が有害で危険であることの証明とすることはできない。多くの患者は、数時間たって大麻の効果が消えると、症状も消える。特に治療は必要なく、患者はその後、自分の適量を知り、適切な使用方法を自分で学ぶ。
  アメリカでは精神科医の大手の団体が大麻の医療使用を支持している。2000万人とも言われる大麻使用者のうち、大麻精神病と診断されたり、大麻が原因で異常犯罪を犯したという報告はない。
  尿から大麻成分がでたということだけで大麻精神病と断定できるなら、アメリカでは2000万人、オーストラリアやカナダでは1000万人が大麻精神病の疑いがあるといわなければならない。
  なお、先日の相模原事件に関しては、検出されたという大麻成分がいわゆる大麻(THC、CBDなど多くの成分をな含む)なのかあるいは合成THC=危険ドラッグなのかいまだに判然としない。大麻と危険ドラッグはまったく異なるものである。
  タレント医者が責任をもって「大麻精神病とそれによる凶悪犯罪」が日本で発生したと断定できるなら、新説として世界の医療学会に発表すべきである。  (文責 前田)

 

 


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