日本薬学会月刊誌「ファルマシア」が大麻・カンナビノイドを特集

  ファルマシアは薬学会が発行する専門誌で、内容は医薬品に関するものがほとんどである。
  2001年、九州大学の山本経之助教授(当時)の「大麻/カンナビノイドから創薬への可能性」という論文が掲載されたが、その後15年間の長きにわたり、薬学専門誌でありながらカンナビノイド(大麻の薬理成分)に関する論文は掲載されなかった。
  そのファルマシアが2016年9月号で「大麻・カンナビノイド」を特集した。(下記画像 目次参照)
  「危険ドラッグと合成カンナビノイド」という論文が掲載されている。危険ドラッグとは大麻の主成分であるTHCを化学的に合成(化学合成THC)したもので、一部の医薬品や実験用に利用されている。大麻の有害性のない医薬品として開発されたが、合成とはいえTHCが含まれるので、当然、精神作用はある。

  合成THCはスパイスなどという名称で、2000年代初頭、ヨーロッパや日本で流行したが、当初、違法性がなかったため、大麻が禁止されている国や地域で、大麻の代替品として使用された。つまり危険ドラッグ(化学合成カンナビノイド)は大麻の多幸感などの精神作用を好む者が、違法な大麻の代わりに使用したものである。日本で死亡事故を含む多くの犠牲者を出しつつも、合法的で大麻より安価であったため、使用者は減らなかった。危険ドラッグの使用者への聞き取り調査によると、使用者の多くは、「やっぱり合法だし、安い。しかし使用後の、特に翌朝は気分が悪くなるので大麻があったら危険ドラッグはやらない」と答えるものが多かった。
  天然の大麻にもTHCが含まれており、精神活性作用はある。しかし大麻は「大麻精神病」を引き起こしたり「暴力的」にすることはない。国際薬物犯罪事務所(UNDOC)の2008年報告によれば、大麻摂取による精神病は「きわめて大量に摂取した場合発生することはあるが、それも稀である」としている。また、大麻は使用者を暴力的にすることはないというのは、アメリカ医学研究所の報告(IOMレポート)やWHO報告も認めている。
  実際、自然の大麻(化学合成THCではなく)摂取が暴力事件を引き起こしたことは、日本ではない。アルコールなどとの併用がない大麻だけの粗暴犯は、これまでないのである。医療目的だけではなく、嗜好用も合法化したアメリカ・コロラド州とワシントン州の州政府の最近の発表によれば、嗜好用に合法化した後も暴力犯罪と交通事故が減少したと伝えている。
  大麻の代替品としての危険ドラッグ(化学合成THC)が多くの事故につながっているのなら、大麻を合法化してしまったほうがいいのではないか。大麻は依存性や耐性上昇がなく、実質的な致死量がないきわめて安全なものである(国立精神神経センターでは大麻だけで受診するのは1年に1人いるかどうかということである)。

 

  目次で特に興味深いのは、

 

  「内因性カンナビノイドとシナプス伝達調節」

 

  「内因性カンナビノイドの中枢および末梢神経系疾患への関与」

 

  「カンナビノイド系を標的とした医薬品開発状況」

 

  「危険ドラッグと合成カンナビノイド」

 

  「米国における医療大麻の現状」

 

  などで、日本でもかなり医学的な専門的研究がなされているのがわかる。

 

  この15年間、日本薬学会の機関誌であるにもかかわらず大麻に関する論文がまったく掲載されてこなかったが、今回の特集号により「大麻には医療効果がある」ことが否定できない事実として日本でも認めざるをえなくなった。
  「医学的・科学的な議論の場がようやく出来てきた」と福田医師はいう。
  大麻取締法は大麻には医療価値がないとしてきたが、裁判所も検察庁も医療効果があることを認めざるをえなくなり、裁判に与える影響も大きい。
  なお日本薬学会事務所のスタッフは、通常、企画は1年ぐらいかけるのだが、今回の特集号は半年でまとめたという。山本医療大麻裁判についても知っていて、その影響を受けていないとは言えないとも話した。

 

  アステラス製薬(株)研究本部が書いた原稿もおもしろい。
  (上記画像 表1)には、主なカンナビノイド関連の発売済み、開発中または開発中止化合物の一覧が掲載されている。
  ドロナビノールは1993年に発売され、がんの化学療法による嘔吐抑制剤としてマリノールという商品名で売られている。
  ナビロンは2000年、ナビキシモロス(商品名サティベックス)は2005年に発売されている。
  このうちイギリスGW製薬のナビキシモロス(サティベックス)は大麻草全草から抽出したもので、大麻取締法が禁止する「大麻から製造された薬」にあたる ため、海外の多くの国で多発性硬化症やがんの疼痛治療薬として認可されているにもかかわらず、日本には輸入すらできない。
  ドロナビノールは化学合成THCが主体で、危険ドラッグと基本的には同じでものである。麻薬に指定されているため、麻薬免許をもつ医師なら日本でも処方できる。しかしこれまで治療の現場での使用例は報告されていない。厚労省は医療大麻について聞かれると「ドロナビノールという安全なものがあるし、日本で も合法なのだからそれで研究すればいい」と答える。しかしドロナビノールは効果が限定的で、患者の評判も悪いため、現在では医療現場ではあまり利用されて いない。ともかく基本的には「危険ドラッグ」なのである。
  ほかに外傷性脳障害、術後痛、抜歯後痛、強皮症、アトピー性皮膚炎、変形性関節症痛、帯状疱疹後疼痛、脊髄損傷後痛、肥満などについても開発され、臨床試験が実施されたが、上にあげた3薬品以外はすべて中止・停止・市場撤退となっている。
  これは大麻草に含まれるTHCなどの成分を、化学的に合成したものは効果がないか、扱いが難しいということを意味している。
  製薬会社としては自然の大麻は有害で医薬品としても不適で(なければならず)、したがって有効成分を化学的に合成したもののほうがいいということになる が、実際に上にあげたいろんな病気の臨床試験を通して、化学合成したものはそれほど効果がないということを自ら証明する結果となった。
  一方、自然の大麻は上にあげた病気以外にも多くの病気に対して効果があることが臨床的、経験的に知られている。
  医療大麻は庭に生えてる大麻草を使用するのが、製薬会社のお世話にならずに、もっとも効果的で安価であることを、製薬会社が臨床試験の失敗を通して証明したと言えるのである。

 

  危険ドラッグ反対、大麻と危険ドラッグをいっしょくたにするな!

 

 


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