山本医療大麻裁判 第四回公判報告 2016年6月30日

  6月27日、東京地裁819号法廷で、午後1時30分から2時間、第四回公判が開かれた。
  当日は、福田医師の証人尋問だけだったが、山本被告人も出廷し、どんな状況であろうと、裁判が終わるまで、被告人席に座っていなければならなかった。(途中、山本さんは顔色が灰色になり、3度うめき、2度、鎮痛剤を服用した。)

  26日夜の時点で、山本さんの腹部は腹水で臨月のようにパンパンになっていた。歩くのが困難だったので、車いすで入廷した。

 

  福田医師の証言はすばらしく、ときどき傍聴席から、小さく「そうだ」という声が聞こえた。まるでブルースリーの格闘シーンのように、一撃で倒す胸のすく証言だった。休憩時間には傍聴人が廊下にでてきたが、全員、興奮を隠せなかった。
  山本さんはメールで「さすがに昨日はパンパンで苦しかったですが、気分はすがすがしいです。福田先生の証言のなかに一歩も譲らぬ揺るぎない信念を、、、、幸せを感じる日でした」と書いている。
  約1時間半の証言で、福田医師(元国立がんセンター研究部長・肝臓がん専門)は、大麻は、特に末期がんの苦しみを緩和するのに効果があること、有害性がほとんどないことなどを医学雑誌 Lancet や New England Journal of Medicine など、権威のある専門誌を引用しながら証言した。
  ある新党の国会議員が、「医療大麻はいいが、嗜好用大麻の乱用はどんどん逮捕しなければいけない」とか「CBDというマリファナの精神作用がないものな ら安全」とか「せめて臨床研究ができるように」と国会で発言したが、福田医師は「タバコやアルコールや抗がん剤より害の小さい大麻で逮捕するのはおかし い。最近、アメリカ4州で医療だけでなく嗜好用も合法化されたが、有害性がそれほどないという明白な証拠だ。社会に混乱がもたらされるわけでもない」と証言した。
  約1時間の弁護側尋問のあと、検察官が半時間、福田医師を尋問した。その内容はこれまでのすべての大麻裁判と同じで、ほとんどは弁護側が想定していたものだった。

 

  検事 「臨床試験データはあるのですか」 
  福田 「はい、アメリカ国立がんセンターなど権威のある研究所が、多くのデータを出してます」

 

  検事 「まだ研究段階ということですね」
  福田 「医学には完璧ということはなく、いつも研究途中です」

 

  検事 「有効成分がたくさんあるということですが、まだすべて解明されているわけではないんですね」
  福田 「漢方でもそうですが、すべての成分と作用、その相互作用などが、全部、わかるということはありません。それをうまく組み合わせていい効果がえらればいいのです」

 

  検事 「有害性はあると先生の本にも書いてますね」
  福田 「薬は何でも副作用があるし、どんなものでも過度に摂取すれば程度の差はありますが、有害性はあります。ただ、大麻の場合、タバコやアルコールのよ うな依存性もなければ、致死量もなく、非常に安全性の高いものです。また大麻の精神作用は抗うつ作用や精神安定作用があり、病気治療に効果的です」

 

  検事 「よく幻覚や妄想がでると言われてますが」
  福田 「誰かが言い始めた噂レベルのことで、実際にそのようなことがあるという論文はありません。そのような論文があれば見せていただきたい。私は1,000に近い大麻の研究論文を読みましたが、そのような論文はなかった。」

 

  検事 「有効成分がわかっているのなら、それだけを利用すればいい」
  福田 「化学合成THCやCBDなどの成分を単体で使うより、多くの成分が含まれている自然のままのもののほうが効果が高い。漢方の使い方と似ています」

 

  検事 「先生は大麻には非常に効果があるがそれほど害はないとおっしゃってますが、それは、」
  福田 「私が言ってるのではありません。アメリカの医学界が裏付けに基づいて言ってるのであって、世界では常識なんです。臨床研究は必要だが、患者さんができるだけはやく、今すぐにでも使えるようにしないと意味がないのです」

 

  最後に福田医師は「リスボン宣言という患者の権利を定めた国際規約があり、日本医師会も認めていますが、それによると患者は最新で最善の治療法を受け、 苦痛を緩和される権利があります。これは基本的人権という以前の、当然のことです。医療という観点からすれば、大麻取締法4条がどうこうという問題ではな く、当然、医師も患者も選択肢のひとつとして使用できるべきものなんです」
  尋問中、検事が「THC、ええっと、テトラ・ヒ、ヒ、ヒ」とヒーヒー言い始め、福田医師に「あと何でしたっけ?」と聞くシーンもあった。裁判官が検事を制止し、「私が直接聞きます」とあとを続けるシーンもあった。検事にとっても苦しい時間だったようだ。
  大麻は多幸感や抗うつ作用があり、そのために嗜好目的で利用し、日本では年間約2,000人が逮捕されている。よく「ヒッピーみたいな若者が大麻を吸って捕まるから大麻のイメージが悪くなり、医療使用も合法化されないのだ」という人がいる。
  しかし、患者が最も安心して利用でき、治療に専念できるのは、「医療大麻は完全合法だが、嗜好大麻は死ぬほど厳しい状況」だろうか?その場合、患者であっても嗜好用で使用していると間違われて懲役5年の刑を受けるというようなことは起きないだろうか?
  患者にとってもっとも望ましいのは、大麻に薬効があって、しかもその使用によって重罰を受けない環境のなかで、医師の診断を受けながら、治療を続けるということではないだろうか?
  嗜好の人たちは医療のことを理解し共感しているのに、患者たちが嗜好のひとたちをけなすのは患者エゴと呼ばれてもしかたがないかもしれない。   
  なお福田医師は熊本大学ボクシング部のキャプテンをしていたということで、身のこなしは軽い。歩くのも速いし、しゃべるのも速い。頭の回転はそれよりさ らに速い。裁判官も、この人はただものではないな、俺も負けるかも、という顔をして聞きいっていた。(文責 前田)

 

 


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