山本医療大麻裁判 第三回公判 報告 2016年6月9日

(第3回公判 冒頭陳述)

 

  6月6日、東京地裁で山本さんの3回めの公判が開かれた。
  2回目の公判(4月27日)では病状や入退院のいきさつのほか、大麻治療に関する医師による意見書などが証拠として提出された。
  今回の公判では、まず弁護側の冒頭陳述(後半)が行われ、その陳述の内容に沿った証拠リストが提出された。
  証拠はできるだけ公的な機関が発行したものに限定した。以下、冒頭陳述と証拠について簡単に述べる。

 

 

 

  ◯ 日本における医療大麻禁止のいきさつ(敗戦後、産業大麻の存続のために医療大麻がスケープゴートにされたいきさつ、当時の国会議員が大麻規制に反対していたこと。立法根拠がないこと)

 

  ◯ 国際条約(1961年の麻薬に関する単一条約)では、臨床試験を含む医療と科学的研究を禁止していないこと

 

  ◯ 1997年のWHOは大麻の医療研究を認め、さらなる研究を推奨していること

 

  ◯ 国際条約を監視する国際麻薬監視委員会は、医療大麻の研究を歓迎していること(2009年 INCB報告)

 

  ◯ 過去の最高裁判決(1985年)における大麻の有害性の判断は、すでに医科学的根拠が薄弱になっていること

 

  ◯ 医薬品には必ず副作用があるが、その副作用という有害性(リスク)より有益性(ベネフィット)が大きければ、有害性があることを前提に、有害性を抑制しつつ、その有益性を利用するものであること(有害性があるからという理由で臨床試験を禁止したり、患者による使用を禁止するのは医学的にみて不合理であること)

 

  ◯ 厚労省管轄下の「麻薬覚せい剤乱用防止センター」の有害性情報は根拠がないこと。その情報が社会、特に必要としている患者に害悪をもたらしていること。

 

  ◯ 大麻が暴力犯罪や交通事故や窃盗などの犯罪につながらないこと(コロラド州の例)

 

  ◯ 大麻が無動機症候群をもたらしたり、他のより強い薬物にすすむ入り口になることはないこと(無動機症候群、ステップストーン理論はアメリカの研究ですでに明確に否定されていること)

 

  ◯ 大麻を医薬品としてみた場合、ほかの処方薬がもたらす有害性より大きいとは言えないこと(デパス、ベンゾジアゼピンなどの向精神薬の副作用には、幻覚、妄想、振戦などの精神的有害性が大きいものがあること。大麻の依存性、耐性上昇、致死量が実質的になく安全性と効果の幅の広いものであること)

 

  ◯ 被告人 山本氏が処方されているモルヒネ系鎮痛剤の有害性と危険性の実例

 

  ◯ 厚労省は今年、欧米のコンパッショネートユース(未承認薬の人道的使用制度)に似た制度を作り、患者の要望を受けるとしているが、大麻が除外されること

 

  ◯ 先進8カ国(G8)諸国で患者が大麻を医療目的で使用した場合、刑事罰を科する国はないこと(医療大麻は非犯罪化、あるいは合法化されている。アメリカでは2016年2月現在、23州で合法化され、ドイツ、カナダは2017年には医療大麻を完全合法化することを宣言していること)

 

  ◯ 過去の裁判で「大麻の医療使用は正当化される場合がある」との判決がでていること(2004年 大阪地裁)

 

  さらに冒頭陳述では、人道的観点からみて、大麻取締法4条が違憲であることが述べられた。

 

 

 

(検察と弁護側の戦術)

 

  これまでの医療目的使用の主張を含めたすべての裁判において、「大麻取締法は大麻が有害であるという公知の事実に基づき、国会が裁量権(立法裁量権)により制定したものであるから合憲」(1985年 最高裁)との判例にしたがい、法廷における大麻の有害性や違憲審査を必要性のないものとしてきた。
  今回の件でも検察側の戦術は、これまで同様、議論を避け、単なる所持事件として片づけようというものである。
  確かに山本氏は大麻取締法4条違反で起訴されたわけではなく、第3条の所持で起訴されている。したがって、4条が違憲であるとの主張は、本件とは無関係として審議の対象とはならず、肩透かしを食わされる恐れが強い(検察の狙い)。また山本被告人には4条に関して主張する資格はないとされる恐れもある。
  そうすると今回準備した多くの証拠は関係性のないものとして、検察が証拠採用に不同意とし、裁判官もそれを認める恐れが強い。
  つまり、これまでの裁判を通して、
1.立法裁量権により制定されたから、大麻取締法は違憲性がない
2.証拠類はすべて不同意
との2点が、当初から予想されていた。
  この点を前もって潰しておく必要性があった。弁護側の違憲主張はそれらの点を考慮して作成されたものである。素人には法的思考が不慣れであるということと、最高裁の判例をひっくり返そうというものであることなどから、その論理は専門的で何度も読まないとわかりにくい。しかしこれまでの多くの大麻裁判の欠陥を踏まえて作成されたものであり、最高裁は門前払いではなく、何らかの審議をしなくてはならないような文書となっている。

 

 

 

(検察は証拠採用に同意し、正々堂々と戦え!)

 

  さて提出された証拠であるが、2回めに提出された証拠のうち、被告人山本氏の病状や入退院の記録以外は、検察により、一つ残らず、すべて不同意とされた。つまり弁護側は証拠なしで弁論しなくてはならない。弁護側弁論に対して検察は「証拠のないことを言わないでください」という理屈でくる。証拠に不同意しておきながら、今度は証拠のないことを言うなとくるわけである。(もっとも、無罪の証拠を隠して有罪にしたり、証拠を捏造する検事もいるぐらいだから、この程度はあたりまえの範疇に入るのだが)
  検察は国会審議や過去の裁判の判決まで不同意にしており、弁護側は刑事訴訟法に基づき不同意に反論するが、最終判断は裁判官に任されており予断は許されない。結果は2週間程度で明らかになる。なお当裁判の裁判官は、清原覚せい剤事件を担当した裁判官である。

 

 

 

(悪化する被告人の病状)

 

  山本氏は6日の公判で体調をくずし、翌7日に緊急入院を余儀なくされた。入院は、逮捕後半年ですでに数回を数え、手術も受けた。しかたなく受けた抗がん剤のせいで、体力は一気に落ちた。現在は腹水がたまり、妊婦のような腹になっているが、これが肝硬変にすすんで黄疸がでると非常に危険な状態になる。
  検察は証拠採用に同意し、正々堂々と、証拠に基づいた審議をすべきである。法は国民を守るためにあるものであり、70年前に制定された大麻取締法を守るために、患者を殺すようなことがあってはならない。

 

 

 

(次回公判)

 

  次回は6月27日、13:30から、福田医師による証人尋問が行われる。7月12日、山本被告人尋問の予定。
  検察は証拠不同意など姑息な手段に訴えず、正しいと思うことを正々堂々と主張し、議論に応じるべきである。それが国民への奉仕者・公務員としての検事の仕事である。

 

 

 

(証拠一覧、弁護側冒頭陳述内容については、後日、掲載します) (文責・前田)

 

 


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