福島県で東京電力原子炉が事故を起こして、この3月11日で5年になる。
事故後、福島県では避難指示が出され、帰宅困難地域(特別許可なしには立入り禁止)、住居制限区域(居住不可。許可なしに泊まることはできない。ただし区域への立入りは自由)、避難指示解除準備区域が設定されている。住居制限地域は、年間積算線量が20~50ミリシーベルトの地域である。
福島県では数十年あるいはそれ以上の間、放射能汚染が続き、多くの村や町が廃墟のまま取り残される恐れが強い。
放射能は遺伝子を傷つけがんを誘発するが、近い将来、これらの地域住民に多数のがん患者が発生する恐れがある。
国立がん研究センターの研究では、大麻の有効成分であるカンナビノイドには、がんによる急速な体重減少や疼痛緩和、食欲増進、睡眠の質の向上に効果があることが報告されている。また血液がんや肺癌には、大麻が治療的効果があるという研究報告もある。
(福島の立入り制限区域周辺で大麻を栽培し、がん研究と治療に役立てることができないか)
アメリカの医療大麻合法州では、体育館のような大型の栽培施設がつくられ、良質で品質が安定した大麻の供給が可能になっている。
一方、日本にはタバコ専売の歴史があり、葉タバコの生産から製造まで一貫して行われてきた。JT(日本たばこ産業株式会社)には医薬事業部もある。ホームページには「病気から世界の人々を救う「オリジナル新薬の創出」に挑み続けます」とある。
日本政府は「たばこの規制に関する世界保健機関(WHO)枠組条約」を批准したが、海外に比べて規制は緩い。一方、国民のタバコ離れがすすみ、JTとしては、遅かれ早かれ、事業内容の転換が避けられない。
例えばJTがタバコの販売をやめ、大麻医療研究を推し進め、「オリジナル新薬の創出」に成功すれば、タバコによるがんなどの病気を防止できるばかりでなく、「病気から世界の人々を救う」ことができる。
海外では大麻の有効成分カンナビノイドの研究が進み、世界特許を取得する企業もでてきている。日本も、今、やらなければ手遅れになる。
一方、アメリカでは23州で医療大麻の栽培と販売が合法化され、州の税収増に貢献している。大麻にはタバコ、アルコールほどの依存性・耐性上昇がないことは厚労省も認めており、実質的な致死量がないことから、医薬品としての利用価値は高い。
(実現のために利用可能な法制)
(1) 平成20年、内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の連携で、「先端医療開発特区(通称スーパー特区)」制度が創設された。
そのテーマには「医療上特に必要性が高いと認められる医薬品、医療機器については、優先的な相談、審査を実施する」とある。また、「国民保健に重要な治療・診断に用いる医薬品・医療機器の国際的な協同研究開発(がん・循環器疾患・精神神経疾患・難病等の重大疾病領域、希少疾病領域その他)」が提案されている。
先端医療というと何十億もする高価な医療機器を思い浮かべがちだが、国民の保健に役立つ新しい治療の可能性のあるものは、たとえそれが自然の薬草の研究であろうと、先端医療に含まれると考えるべきである。重要なのは先端かどうかではなく、国民の健康と幸福にどれだけ役立つかである。
(2) 首相官邸国家戦略特区特別ページには、特区を設けて規制緩和をする目的として「日本経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行していくための突破口として、「医療等の国際的イノベーション拠点整備」といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じる」とある。
日本でも欧米を参考にコンパッショネート・ユース制度の検討が進められているが、制度化されて患者が恩恵を受けるまでには、まだ時間がかかる。また大麻だけ、制度からはずされる恐れもある。上記特区制度による早期救済が求められている。
(3) 福島復興再生特別措置法 (平成24年3月31日法律第25号)
(放射線の人体への影響等に関する研究及び開発の推進等)
第四十六条
国は、福島の地方公共団体と連携して、放射線の人体への影響及び除染等の措置等について、国内外の知見を踏まえ、調査研究及び技術開発の推進をするとともに、福島において、調査研究及び技術開発を行うための施設及び設備の整備、国内外の研究者の連携の推進、国際会議の誘致の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
(産業復興再生計画の認定)
第五十一条
ハ 新品種育成事業(新品種(当該新品種の種苗又は当該種苗を用いることにより得られる収穫物が福島において生産されることが見込まれるものに限る。)の育成をする事業であって、福島の地域の魅力の増進に資するものをいう。)
(研究開発の推進等のための施策)
第七十四条
国は、認定重点推進計画の実施を促進するため、再生可能エネルギー源の利用、医薬品及び医療機器に関する研究開発その他の先端的な研究開発の推進及びその成果の活用を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(福島を医療大麻特区に指定するメリット)
これらの特別法にもとづき、福島を医療大麻特区に指定した場合、県民と地域住民に対してどのような利益がもたらされるであろうか。
○ (土地の有効活用) 住居制限区域と避難指示解除準備区域は、現在のところ、人が居住するのには適していないが、植物の栽培に不適かどうかは確認されていない。これら地域で栽培された大麻が医療用に使用可能であるとすれば、将来、長期にわたって、これら地域を有効活用できる。
○ (産業再建) 大麻を医療用に栽培した場合、付加価値が高く、タバコのような工業製品にすることによって、福島の農業と工業の復興につなげることができる。また、新品種の種苗を開発し、医療効果のより高い大麻製品を開発することにより、さらに付加価値をつけることができる。
○ (地域の雇用に貢献) 原発事故被災者が地場産業に就労することにより、地域の雇用安定に貢献できる。
○ (歴史的経験) 福島県では、昔から良質の苧麻(ちょま)が栽培され、上杉家の財政を支えたと言われている。苧麻とともに、大麻を栽培していたことも知られており、その歴史的な経験を生かせる。(「をのこと」:からむしと共に昭和村を支えた大麻)
○ (放射線の人体への影響調査) 放射能による癌の発生状況、その治療法の研究などが地理的に行いやすい。特に疫学的調査と研究(コホート研究)を行うことにより、放射能障害と治療法に関する世界的研究に貢献することができる。
○ (福島原発事故を永遠に忘れないために)