(未承認薬の人道的使用:日本版コンパッショネートユース制度)
コンパッショネートユース(CU)制度とは、生命に関わる重篤な疾患で、ほかに有効な治療法がない患者に、人道的見地から未承認の医薬品を供給することを合法化する制度である。
アメリカでエイズ大流行を契機に、1987年、CUが法制化され、大麻もその適用を受けることになった。エイズ患者に大麻が効果があることが経験的に知られ、患者に同情した人たちが法を制定し、それが多くの州に広がったのである。
1989年にはEU欧州委員会は「加盟国は自分の患者に必要な未承認薬を自己責任で用いたいと願う医療専門家の善意の自発的な要望に応じて、それらを供給できるようそれぞれの国の法律に取り込むことができる」とし、2000年にはすべての加盟国でCUが制度化された。
日本にはこの制度がなかったが、2015年、ようやく欧米のコンパッショネートユース制度に近い制度が作られ、医療関係者や患者の要望があれば、未承認薬の使用が検討されることになった。
しかし大麻に関しては日本では単に未承認であるだけではなく、大麻取締法で明確に医療使用を禁止しており、法的整合性という観点から、日本版コンパッショネートユース制度に組み入れることはできない。
大麻ががんや難治性疼痛や多くの難病に効果があり、しかもその有用性は有害副作用より大きいことは欧米の医学界では常識となっており、実際に医療の場で使用されている。日本版CUが大麻を除外する合理的な根拠はない。
そもそも人道的見地から作られた制度であり、国民が等しくその恩恵を受けられるべきであるにもかかわらず、国民の中に、その恩恵を受けられないばかりか、依然として投獄の恐れがある患者がいるという事実は、この制度の根幹を揺るがすものである。
この制度が人道的な観点から欧米並みに整備されていれば、山本氏は違法な手段で大麻を入手する必要はなかったのである。
なお、日本版CUの対象は、
1.適応疾病の重篤性が次のいずれかの場合
生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)
病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患
その他日常生活に著しい影響を及ぼす疾患
2.医療上の有用性が次のいずれかの場合
既存の療法が国内にない
欧米等の臨床試験において有効性・安全性等が既存の療法と比べて明らかに優れている
欧米等において標準的療法に位置づけられており、国内外の医療環境の違い等を踏まえても国内における有用性が期待できると考えられる
などとなっており、末期肝臓がん(ステージ4b)の山本氏には、すべて該当する。
1990年代には大麻の医療的有用性が、西洋医学的にも明らかになった。その後も種々の疼痛性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、腫瘍性疾患(がん、肉腫など)、抑うつ、不安症状、PTSDなどに有効であることがわかってきた。厚労省は大麻のネガティブな部分を何百倍にも誇張し、宣伝するばかりで、大麻の医療的有用性については無視または否定してきた。
欧米では人道的観点から、大麻の医療使用を例外的に認める制度ができ、多くの患者が恩恵を受けている。しかし、日本は厚労省の怠慢により、20年近く遅れ、未だに改善される気配すらない。
厚労省の怠慢による制度的不備と遅れが原因であるので、山本氏は無罪である。
厚労省は不必要な苦痛を与えたことに対して、山本氏に謝罪すべきである。
また山本氏逮捕にあたって、取調検事が拘留期間を20日まで延長した結果、山本氏はその後体調が極度に悪化し、緊急入院を余儀なくされた。山本氏は取調べの段階から容疑事実をすべて認め、逃亡や証拠隠滅の恐れもなかったにもかかわらず、S検事は20日間、山本氏を不必要に拘束した。それが人道に悖る行為であることを、S検事は考えることすらしなかった。それも「大麻には乱用の危険は大きい」が「医療価値はない」という厚労省の事実に基づかない悪宣伝の結果である。もし大麻に医療効果があることを知っていながら、ほかに治療法がない山本氏から大麻を取り上げるとしたら、検事も裁判官も殺人犯になってしまうということを理解していただきたい。