大麻の不思議さ

  「幸福感と身体の機能的関連の解明」には、内因性カンナビノイド(人間が体内でつくるマリファナ様物質)は、多幸感を引き起こす麻薬である大麻に含まれる化学物質と類似する生体内生理活性物質であり、オメガ3不飽和脂肪酸と拮抗するオメガ6不飽和脂肪酸から合成される。内因性カンナビノイドとオメガ3不飽和脂肪酸は体内の炎症反応の抑制に関連することも知られている。したがって、この内因性カンナビノイドが幸福感の源である生理活性物質であるとともに、幸福感による炎症性サイトカイン分泌抑制を媒介する生理活性物質であると予想される」と書いてある。
  不思議なのは、大麻の種の油には必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6が80%近く含まれているという点だ。これらの油は人間が体内で作れず食品から必ず摂取しなくてはならないため「必須脂肪酸」と呼ばれている。大麻の種の油にはこの必須脂肪酸が80%近く含まれており、動植物すべての油脂のなかで、最も多い。
  内因性カンナビノイドはオメガ6から合成される、ということは、大麻の油を摂取すれば内因性カンナビノイドが増えるということだ。内因性カンナビノイドに加えてオメガ3は体内の炎症反応を抑制するということは、大麻の油には体の中からの幸福感とストレスに負けない体をつくる力があるということだ。
  内因性カンナビノイドは体内の細胞のカンナビノイド受容体に働きかけることで様々な作用を発揮するのだが、この受容体はたんぱく質でできている。大麻の種には30%近いたんぱく質が含まれ、食べると消化されてアミノ酸に分解されるが、それが再び人体に必要なたんぱく質に合成される。ということは、大麻の種を食べればその脂質が体内でカンナビノイドに合成され、大麻の種のたんぱく質はカンナビノイドと結合する受容体の材料となるということだ。これだけでも不思議なものを感じるが、大麻の種の油は細胞膜にとって欠かせない材料であることをあわせて考えれば、人間にとって大麻の種を食し、花穂をマリファナ(カンナビノイド)として吸引するということは、多幸感や病気予防という人間の生きること全体にかかわることのように思えてくる。
  さらに不思議なのは必須脂肪酸である大麻のオメガ3とオメガ6のバランスだ。例えばオメガ3は血液を柔らかくしたり炎症を抑える作用があり、オメガ6は血液の凝固をすすめるのだが、どちらかが多すぎてもよくなく、バランスが重要と言われている。その比率は1対5が理想的とされているが、大麻の油はすべての油脂のなかで、その比率に最も近いというのも不思議だ。亜麻仁油にはオメガ3が50%以上含まれているが、理論的には多すぎる。摂取しすぎると血が止まりにくくなる。
  多発性硬化症の患者さんが、大麻の油を飲んだら調子がよくなったと言っていたことがある。マリファナ喫煙ならわかるが大麻の種にそんな効果があるのかと疑っていたが、油が内因性カンナビノイドを作り、オメガ3とともに炎症を抑制したのかもしれない。彼は発病してから大麻を喫煙するようになったが、疼痛や痙攣、しびれ、睡眠障害、ステロイドの副作用によるうつなどに非常に効果があると言っていた。ムーンフェイス(ステロイドの副作用で顔が月のように丸くなる)で体もむくんでいた彼も、10年間の闘病むなしく数年前に亡くなった。「ここまで悪化する前に大麻に出会っていたらもっとよかったのに」と口癖のように言っていた。
  内因性カンナビノイドあるいはマリファナ喫煙として外部から摂取する場合でも、大麻の種を食べればその効果が最も発揮できるような体内状況を、大麻の種が自分でセッティングするというのは不思議としかいえない。
  大麻には有効成分が300種以上含まれていると言われている。そのうちこれまで60種以上が解明された。そのそれぞれがどのように働くかはほとんど解明されていない。しかし効果があるのは確実だ。
  人体には大麻の有効成分が作用するカンナビノイド受容体が、脳や神経や臓器に幅広く分布している。その幅広さはほかの受容体とは比較できない。幅広いということは多くの病気に効果があるということだ。
  なぜ大麻には非常に多くの成分が含まれ、それぞれが相互作用で効果を高め、しかも人体には大麻の成分を受けいれる受容体がこれだけ多くの部分にあるのか?
  大麻が複雑な理由は、人体の複雑さと関係しているといえるかもしれない。人体は科学では解明しきれない複雑さをもっているが、大麻がその人体の複雑さに呼応する形で、つまり人間に寄り添う形で進化してきたのではないだろうか。ここまで言うと、ほとんど推測の域をでないが、大麻にはそうとしか考えられないような不思議な何かがある。

 


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