病人が逮捕された 運悪く、裁判になったら

  患者が逮捕されたらどうすればいいか。
  日本では末期がんであろうと、モルヒネが効かない激痛であろうと、大麻を使用すれば逮捕され、裁判にかけられる。大麻には使用罪はないが、使用には所持や栽培がともなうので、患者であっても罪に問われる。
  患者が取る道は2つある。ひとつは「謝る」、もうひとつは「争う」である。

 

(どうせ有罪なら謝ってしまう)

 

  「謝る」というのは、「もう2度と法律に違反することはしません。ごめんなさい」と謝ってしまうことで、初犯だったり、所持・栽培の量が個人使用程度なら、ほとんどの場合、執行猶予がつく。「懲役2年、執行猶予3年」という判決なら、「本来は2年間刑務所に入らなければならないが、今後3年の間に、再び犯罪を犯し、執行猶予が取り消されなければ刑務所には入らなくてもよろしい」という意味だ。
  これまで、逮捕された後、多くの人たちが裁判のなかで「人権」「幸福追求権」などの憲法的権利を主張して争ったが、大麻取締法が制定されてから約70年間、無罪になった人は、ただの1人もいない。(会報4号 P17-P19 「大麻取締法:このままでいいのか」参照)
  医療目的だったと主張しても、「それは弁解にすぎない。反省の情がみられない」と、かえって刑罰を重くされることすらあった。

 

(裁判が始まってから医療目的だったと主張しても認められない)

 

  病は気からという言葉があるが、ストレスでうつになったり、睡眠障害になることはある。しかし検事は「ストレスを抱えている人は多い。病院へ行きなさい。寝る前に酒を飲んだら眠れる。そんな程度で違法行為を見逃すことはできない」と突っぱねてくる。患者が「病院のうつ病薬を飲むとよけいに調子が悪くなる。私は酒を飲めない体質だ。大麻を一服吸うとぐっすり眠れて翌日まで残らない。大麻には酒のような依存性はない。自己責任で使用していて、誰にも迷惑をかけていない」と反論しても、「大麻は有害だから国が禁止している。大麻は暴力団の資金源になる。大麻から覚せい剤にすすんで日本社会がむちゃくちゃになる」と決めつけられる。これは最高裁の判断なので、地裁や高裁が違う判決を出すことはありえない。
  つまり、裁判が始まる前から有罪が確定しているのである。だから、現実的な選択として、謝ったほうがいいと考える人が増えてもしかたがない。

 

(争う)

 

  争うというのは法律用語では、「自分は間違っていない。悪いことをしたとは思わない。法律が間違っている」と主張することで、喧嘩をするという意味ではない。
  ほかに有効な治療法がないとか、鎮痛剤を服用しても軽くならないなどという病気に、自己責任で使用したり栽培したからといって国から犯罪者の汚名を着せられるのがどうしても我慢ならないという場合がある。
  そういう場合は、「自分は無罪だ」と徹底的に争うしかない。
  重要なのは、がんや難病や難治性疼痛などで病院で治療を受けたかどうか、そして診断書を証拠として出せるかどうかである。警察に逮捕されたら、自分は治らない病気で、医師にもそのように診断され、その治療のために大麻を所持・栽培をしたとはっきり言わねばならない。(非常にまれだが、多発性硬化症の患者が、この時点で釈放されたことがある)
  その後、警察の留置場から検察庁にまわされ、拘置所で10日から20日間にわたって、さらに詳しく調べられ、調書を取られる。この調書は裁判ですべて証拠とされるので、いいかげんに答えてはならない。

 

(取調べでは、憲法違反をはっきり主張する)

 

  ここで重要なのは「自分は大麻の医療使用を禁止している大麻取締法第4条は憲法に違反していると考えている。だから使った」、そして「ヘロインやモルヒネのような麻薬が医療用として使えるのに、大麻が使えないのはおかしい。病気治療に役立つものを禁止しているのは健康な生活を保障した憲法に違反していると考えている」と調書に書いてもらうことだ。言ったとおり書いてくれなかったら、調書にサインしなくていい。
  私は何回か、患者の裁判を支援してきたが、取調段階で違憲を主張しておかないと、裁判になってからでは遅い。裁判の途中で、突然、「集団的自衛権は憲法違反である」といっても相手にされないのと同じである。
  私の経験から言って、検察側は医療大麻に関して違憲性を争われることを極度にいやがる。負けるかもしれないからだ。そんなことになったらその検事や裁判官の出世は絶望的だ。
  実際の裁判では、弁護士が、大麻には医療的価値があり、その患者にも効果があったという証拠を提出しようとしても、検事はそれを証拠として認めない「証拠採用不同意」という戦術を必ずとる。すると弁護側には証拠がなくなってしまう。
  しかし、逮捕された患者が調書で「憲法違反だ」と主張してあれば、その主張を裏付けるための証拠として、弁護士は証拠を提出でき、検事はそれを拒否できない。
  これは難病の患者でも同じで、自分は難病だから無罪になるだろうと自己判断して違憲性を主張しないと、裁判になってから弁護士が困る。先に書いたように、「たまたま難病の人が、嗜好用に大麻を吸いたかったのね」としかならないのである。
  証拠としては、まず自分の病気に大麻が効果があるという医学的な資料が必要で、しかも、ほかに有効な治療法がないか、あってもその副作用が耐えられないというものでなければならない。

 

(勝てる可能性はある)

 

  私の裁判の地裁判決では、裁判官は「医療目的での大麻使用は研究段階にある以上、人体への施用が正当化される場合がありうるとしても、それは、大麻が法禁物であり、一般的な医薬品としては認められていないという前提で、なおその施用を正当化するような特別の事情があるときに限られると解される」と述べた。
  「正当化」つまり「無罪」になるには、「施用を正当化するような特別の事情」がなければならない。
  現在のところ、日本には、特別な事情かどうかを判断する医師はいない。しかし、ほかの裁判のように、主張が門前払いをされることはなく、証人として医師を喚問することも可能になり、裁判官は証拠に基づいた判決を出さなければならなくなる。
  これまでの裁判ではすべて嗜好目的が裁かれてきた。しかし、医療目的については私の裁判以外、例がない。私の場合は自分が患者ではなかったが、難病患者が争えば、違った展開になる可能性は高い。特にアメリカの多くの州で医療大麻ががんや難治性疼痛の治療に合法化されている実情をみれば、「大麻はがんに効果はない」という判決をくだす裁判官は、よほど勇気があるということになると思われる。
  門は狭い。しかし一件でも判例がでれば、それが突破口となって多くの患者の苦しみを救うことができる。

 

  まとめると
(1) 自分の病気は有効な治療法がなく、あっても副作用が耐えられないので大麻を使っても罪になるとは思わない。私は無罪だ。
(2) モルヒネなどほかの医薬品は使えるのに、大麻が使えないのは理由がなく、違憲であり、私は無罪だ。。
(3) 大麻に有害性があっても、ほかの医薬品にも副作用という有害性があるので、大麻だけ治療に使えないのはおかしい。
(4) ある裁判で、特別の事情があれば大麻使用は正当化されるという判決があり、自分はそれにあたると考えた。
(5) 大麻使用に関して相談する医者がいなかったので自分で判断するしかなかった。特別の事情かどうか相談にのってくれる医者がいたら相談していた。
(6) 自分は医療大麻の知識がある程度あるので、自己責任で、自己治療した。

 

  「カンナビノイドによる治療を求める患者の会」に入会し、国に「大麻による治療の請願書」を出しておくと、逮捕されたとしても、無罪を主張しやすくなると思われる。(「患者の会」は、現在、設立準備中です)

 


 

 

(画像)

 

 

 

[画像:左から順に]

 

○ 網走刑務所 : 病人を大麻所持で刑務所に入れるのか?
○ 東大付属病院 : 病院で大麻治療するのか?

 


○ カリフォルニア州では医師の診断書があれば、合法的に購入できる。1グラム20ドル程度。

○ がん患者
○ 脊椎損傷患者

 


← 前ページに戻る

← HOMEに戻る