大麻と日本歴史 神話から縄文、万葉集から江戸時代まで

 

  神話時代 「日本誕生」 (1959年 東宝)

 

  [画像:上] 天岩戸(あまのいわと)にお隠れになっていた天照大神(あまてらすおおみかみ)が洞窟から現れて、世の中に光がさした。岩戸の両側に麻の繊維が飾られている。

 

  [画像:下] 病人の枕元には、麻の繊維が飾られている。麻は神話時代から、穢れを祓い、病魔を追い払う力を持っていると考えられていた。
  天岩戸神社によれば、天岩戸は宮崎県にあったとされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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   「縄文人の植物利用」 (2013年 新泉社)には、縄文時代にアサ(大麻)が繊維植物として栽培されていたことが書かれている。縄文人といえば、狩猟・漁猟と単純な野生植物の 採集が中心の時代で、それより文化度の高い弥生時代になって稲作などの栽培技術がすすんだと考えられてきた。しかし、最近の考古学の技術的進歩により、縄 文後期の下宅部遺跡(しもやけべいせき:約3700年前 現・東村山市)には、藍、栗、漆(うるし)などとともに、麻が栽培されていたことがわかってき た。遺跡の復元イラストは、当時の生活が偲ばれて、楽しい気分になる。ページ中央(画像)に「アサ」畑がみえる。
  遺跡から発見された麻の種のDNA解析をするにあたり、現在日本の大麻取締法が障害になったそうだ。

 

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  それより時代が下った奈良・平安時代の万葉集には、30首以上の麻にまつわる歌が掲載されている。

 

  「万葉植物事典」(1995年 北隆館)から

 

  ○ 庭に立つ麻手(あさで)刈り干し布さらす
       東女(あずまおみな)を忘れたまふな
   (刈って庭先に立てて並べて干してある麻の、あの皮を剥いで水で晒して白くする、こんな仕事をしているこの東国の女を忘れないでください)

 

  ○ 娘子(おとめ)らが続麻(うみを)のたたり打ち麻(そ)掛け
       うむ時なしに恋ひわたるかも
    (続麻は紡いだ麻糸、たたりは糸をよる時に使う道具で、台の上に一本棒を立て一組としたものである。打ち麻は木づちで打って柔らかくした麻の繊維。三 句までは「うむ時」の序。続(う)むと倦むとを掛けたもの。いやになる時もなく、いつも恋しく思いつづけていますという意味)。 すばらしい言語感覚。ど こかの国の単細胞の首相に聞かせてやりたい。

 

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  「植物世相史―古代から現代まで」(1971年 社会思想社)

 

   万葉集以外にも、古事記、日本書紀、常陸風土記、古今集、枕草子、方丈記、徒然草などにも麻が登場し、生活に欠かせない繊維植物として扱われている。江 戸時代の俳人芭蕉、一茶の俳句には、意外にも登場していないが、惟然(いぜん)には「ゆり出だす緑の波や麻の風」とあり、季語は夏。栃木県で見た風にそよ ぐ麻畑が眼に浮かぶ。
   諺(ことわざ)では、「麻の中の蓬(よもぎ)」があり、《「荀子」勧学の「蓬麻中に生ずれば扶(たす)けざるも直し」から》蓬のように曲がりやすいもの でも、まっすぐな性質の麻の中に入って育てば曲がらずに伸びる。人は善良な人と交われば自然に感化を受け、だれでも善人になるというたとえ。「麻につるる 蓬(よもぎ)」も同意。

 

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  神話時代から江戸時代まで、駆け足でみてきた。
  「大麻は有害な薬物です。一度吸ったらやめられなくなります。ダメ絶対!」とか叫んでるどこかの国のお役人さんや新聞記者さん、一度でいいから、日本の大麻の歴史をひもといてみたらいかがでしょうか?

 


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