アメリカで国を訴えた患者の戦いと、日本の可能性

  アメリカ連邦法では今も大麻はスケジュールⅠの範疇に入れられ、「乱用の危険性はあるが、医療的価値はない」とされている。
  しかし1970年代という最も厳しい状況下においても、大麻の医療使用が政府から公認されたことがある。

 

(ある緑内障患者の戦い)

 

  それは Robert Randall氏が裁判を起こし、「FDA(連邦医薬食品局 」「DEA(麻薬取締局)」「NIDA(薬物乱用対策協会)「法務省」「保健・教育・福祉省」を訴えたことに始まる。
  Randall氏は緑内障の治療に大麻を栽培していて逮捕された。しかし、Randall氏は医療上の必要性を主張し、1976年、連邦裁判所は「Randall氏の緑内障にはほかに有効な治療の方法がなく、大麻喫煙による副作用も認められない。被告人に医療使用を禁じる医学的根拠はない」という判決をだした。
  Randall氏への訴追は取り下げられ、逆に1978年、Randall氏が「FDA」「法務省」らを訴えると、連邦当局は和解し、Randall氏に公認の医療大麻供給を始めた。アメリカで最初の合法的医療大麻使用患者となった。
  その後、1980年代のエイズへの適用にもつながった。

 

(規制緩和と抑圧の繰り返し)

 

  当時、アメリカは民主党のカーター大統領(1977年1月20日 – 1981年1月20日)の時代で、大麻に寛容な時代でもあった。
 制度適用患者は30人だったが、1992年、効果がないという理由で廃止された。しかし、エイズ患者が増え始め、「食欲不振」「エイズ消耗症状」治療のため、医療大麻合法化運動が再び活発化した。
  その後、1996年、カリフォルニア州議会が、アメリカで初めて Compassionate Use Act (コンパッショネートユース法:未承認薬の人道的使用)を制定し、多くの患者が恩恵を受けることになった。
  しかし薬物問題に厳しいジョージ・ブッシュが大統領になると(2001年1月20日 – 2009年1月20日)、患者・支援者との間で多くの争いが起きた。しかし、多くの州が住民投票などで医療大麻を合法化するなかで、オバマ大統領は医療大麻については連邦政府は介入しないと公表し、カリフォルニア州だけで数百ヶ所の医療大麻販売所(ディスペンサリー)が営業を始めた。
  このようにみてくると、支援団体の人道的支援が重要なのはもちろん、最初に国を相手に自分の無罪を勝ち取ったRandall氏の功績が極めて大きいことがわかる。
  Randall氏が無罪を主張した法的根拠は、Common Law doctrine of necessity というもので、簡単にいえば、(医療的)必要性が違法行為による害をうわまわる場合は無罪とすべきというものであり、それを裁判官が認めた。

 

(日本における「無罪」への道)

 

  日本にも当然そのような考え方はある。
  日本で初めて大麻の医療使用が争われた裁判で、裁判官は「医療目的での大麻使用は研究段階にある以上、人体への施用が正当化される場合がありうるとしても、それは、大麻が法禁物であり、一般的な医薬品としては認められていないという前提で、なおその施用を正当化するような特別の事情があるときに限られると解される」という判決をくだした。つまり、正当化される特別な事情があれば「無罪」とするということである。しかし、日本には大麻の医療使用に関する知識をもった医師らはいなく、どのような場合が正当化されるのかはわからない。

 

(日本で無罪を勝ち取る3つの方法)

 

  日本では、事実上、難病指定患者が使用した場合であっても、「医療的必要性」が認められることはなく、「嗜好目的で使用したのがたまたま病人だったにすぎない」としか受けとめられない。医療効果を公的に認める医療関係者は、日本のどこを探してもいないのである。
  このような状況下で、日本の患者が大麻医療を勝ち取るには、政治家に協力を求める以外には、今のところ、3つの方法が考えられる。

 

 (1) 厚労省大臣に「嘆願書」を出す。「自分の病気は難病であり、有効な治療法がない、あっても副作用が辛い」「医師から余命あと6ヶ月と宣告された」「海外では治療効果があるという情報がある」という事実を書いて、大臣に送る。
  これに対して大臣は少なくとも回答をしなくてはならない。黙殺すると、社会問題に発展する可能性がある。もし回答がなければ、仮に自分で栽培して逮捕されたとしても、「大臣に正当化される特別な事情かどうかお尋ねしたのに答がなかったので、自分で判断するしかなかった」といえる。つまり国が適切な判断をしなかったということで、国の責任になる。この嘆願書は連名でもよく、それに名前を連ねるというのは「逮捕を免れる」という点で効果的だと考えられる。

 

 (2) 国を損害賠償で訴える裁判を起こす。大麻に関しては、逮捕されてから無罪を主張することは非常に難しい。
  Randall氏のように患者の側から国を訴える裁判を起こした場合、多くの事実に基づいた証拠を提出することができる。医療大麻禁止により不利益を受けている患者が提訴すれば、国民の関心が集まり、勝てる見込みはある。

 

 (3) 厚生労働省に「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」があるが、ここに患者団体からの要望として大麻を含めてもらう。大麻はタブーになっていて、学者、医師、研究者は自分たちから声を出すことはできないが、患者からの要望があれば検討する可能性は高い。
  またコンパッショネートユース制度(人道的使用)の制定を求め、大麻を含めてもらう。

 

以上、私のオピニオンだが、法律の専門家のご意見をお聞きしたい。

 


  (参考文献)
  ○ 「日本で承認されていない薬を安全に使う」-コンパッショネート使用制度
  ○ Medical Marijuana Law
  ○ Compassionate Investigational New Drug program

 


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